めためた (2022):映画短評
めためた (2022)自由かつ実験的なスタイルで描く人間賛歌
主人公が女性関係にだらしないスランプ中の小説家という時点で、ホン・サンス監督やウディ・アレン監督の匂いがプンプンするが、突然の母の再婚話に戸惑う娘や子どもができない夫婦といった、愛にまつわるエピソードがメタ構造で描かれていく。冒頭から、あまりに自由で実験的な作りだけに、かなり戸惑いも感じさせるが、修羅場なのに洗髪し、ジャッキー好きなあまり酔拳するような登場人物の言動が妙に生々しく見えてくる。賛否分かれるのは間違いないが、いきなりベートーヴェンの「悲愴」を流し、なんだかんだ、可笑しくも哀しい人間賛歌にまとめ上げてしまう鈴木宏侑監督の力技は評価できるかもしれない。
この短評にはネタバレを含んでいます