陰陽師0 (2024):映画短評
陰陽師0 (2024)ライター3人の平均評価: 3.7
キャラ重視で甦った平安ダークファンタジー
佐藤嗣麻子監督の名を映画の分野で久しぶりに聞いたと思ったら、じつに『アンフェア』シリーズ以来。すなわち9年ぶりとなるが、世界観の作り込みはさすが。
安倍晴明と源博雅の若き日のストーリーは原作の前日談というよりは、滝田洋二郎監督による『陰陽師』シリーズ2作のそれ。キャラクターを重視しつつミステリーを転がす、魑魅魍魎の平安ファンタジーに引き込まれる。
冷ややかな晴明と、素直過ぎてヌケている(?)博雅の、それぞれの後の成長をうかがわせるのも味。山崎賢人と染谷将太の組み合わせもよく、テンポよく楽しめる。
まだ初々しい安倍晴明が華やかに宙を舞う
いつか、原作小説のような、のどかでありながら端正かつ風雅な景色を、彩度を抑えた日本の伝統色で描くような陰翳礼讃な陰陽師映画も見てみたいが、今回は「0」のサブタイトル通り、まだ陰陽師になる前の安倍晴明と源博雅の初々しさと華やかさを描く映画なので、この明るく鮮やかな色調も納得。
平安京を俯瞰する空には鳳凰が飛翔し、怪異は竜の姿で出現し、恋情には無数の花が咲き乱れ花びらが舞い散る的な分かりやすさも楽しい。晴明の武闘は、衣の袖や裾が空気をはらんでひるがえる形が美しく、中国の古装ワイヤーアクションの趣き。博雅と思い人が、楽の音を奏でることによって別のどこかで結びつく、というイメージも魅力的。
荒々しい清明
現在の大河ドラマを含めてこれまでの映像化作品ではすでに完成された安倍晴明が描かれてきましたが、今回は若々しい安倍晴明が登場します。夢枕獏の小説を基にしているので相棒として源博雅が登場します。これを演じるのが染谷将太。山﨑賢人演じる若々しい超人・安倍晴明と染谷将太演じる楽人・源博雅の並びは意外なほどにはまりました、今回はタイトル通り”エピソード0”なので”はじまりの物語”で終わっているので、できる事ならこのコンビで”続き”が見たいなと思います。監督が佐藤嗣麻子監督なので外連味たっぷりのアクション活劇でした。