シャクラ (2023):映画短評
シャクラ (2023)ライター3人の平均評価: 4
『るろ剣』アクションと武侠映画の融合
『ドニー・イェン COOL 』以来のドニー・イェン監督作が、武侠小説の第一人者、金庸の「天龍八部」映画化というのは、意外かもしれない。明らかにプロデューサー、ウォン・ジンの策略だが、ドニー本人は原作よりは主題歌など、1982年に放送されたTVシリーズに思い入れがあるようで、『るろうに剣心』で時代劇を変えた谷垣アクションを武侠映画に取り入れる、ドニーらしいアイデアでアップデート。キャラの多さやいきなりの超展開など、原作を知らないと「???」な部分もあるが、『処刑剣 14 BLADES』同様、「何者かの陰謀で追われる身になる」王道な話なので、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』からの新規も無問題!
ストーリーもアクションも見応え十分の武侠スペクタクル!
宋代の中国。身に覚えのない殺人と裏切りの濡れ衣を着せられ、そのうえ己が敵対する異民族の孤児だと知らされた武芸の達人が、自らの出自と真犯人を突き止めるべく壮絶な戦いを繰り広げる。原作は武侠小説の第一人者・金庸。ワイヤーとCGをフル稼働した超人的な剣戟アクションのスピード感、見せ場に次ぐ見せ場で息をつく暇もないテンポの良さも然ることながら、誰もが利害によって動く弱肉強食の世の中で、忠義を尽くして高潔に生きることの尊さ、異民族というだけで人間同士が憎しみ合うことの愚かさを描いた骨太なストーリーに胸が熱くなる。主演を兼ねるドニー・イェンの演出も威風堂々たるもの。見応えのある武侠スペクタクルだ。
<武侠映画の様式美 x ドニー・イェン>に圧倒される
様式美が極まる。中国版時代劇である武侠映画の様式美に、最新VFX技術と現在のアクション映画のスピード感、ドニー・イェン総監督・主演・プロデュースという要素を掛け合わせた世界が出現。武芸の達人たちが身に纏う古代の衣装は薄手で袖も裾も長く、ワイヤーアクションで重力から解放された達人たちの妙技に合わせて空中で優雅にひるがえり、まるで身体の動きを彩る装飾音。達人たちは、手をかざすだけで相手を倒す"気"を使う、一種のスーパーヒーローでもある。
映像を見ながら、武侠映画も時代劇も西部劇も『マトリックス』も『300<スリーハンドレッド>』も『ジョン・ウィック』も、根元のところで繋がっていることを痛感。