燃えるドレスを紡いで (2023):映画短評
燃えるドレスを紡いで (2023)表現が社会を変える可能性について
「皆さん、もう服は作らないで欲しいと言っている。服はもう世界中に充分にあって、なぜこれ以上作る必要があるんですかと」――ケニアで欧米やアジアの先進国から廃棄された衣服の墓場を目にしたデザイナー、中里唯馬はチームのメンバーに語る。我々現代人の根本的な矛盾に突き当たった彼は、ミツンバと呼ばれる安価な古着の塊から新しいコレクションを生成し始める。
地球の生態系には存在しなかった「ゴミ」という異物をどう扱うか。資源循環を前提に製品自体を設計すること。流行=消費の震源地であるパリコレは「思想」の発表場となる。『太陽の塔』に続き、システムと人間性を批評的に問い直す関根光才監督の必見のドキュメンタリーだ。
この短評にはネタバレを含んでいます