HERE 時を越えて (2024):映画短評
HERE 時を越えて (2024)
ライター2人の平均評価: 3.5
時代と人生の定点観測
恐竜の時代から現代までの定点観測を、一本の映画にするアイデアが面白い。
人間ドラマが主に展開するのは20世紀以降で、トム・ハンクスふんする男の半生をメインにして、時代を錯綜しながらそこで生きる人々の人生を描く。カメラ位置が変わらないので、観客はある意味、観察者。その人間模様に共感する度に、幽体離脱して自分の人生を見ているような気分になる。
ゼメキス監督をはじめとする『フォレスト・ガンプ』チームの再結集はもちろん注目点だが、それを抜きにしてもこの映像体験は興味深いものがある。カメラレンズのマジックやデジタルメイクの自然さなどの、ゼメキス作品らしい革新的な映像マジックも見どころ。
一つの場所を見続けるという稀有な体験
もしも「一つの部屋」という場所を、恐竜の時代から、先住民が暮らしていた時代、そして現代に至るまで、長時間にわたってずっと定点観測し続けたとしたら、その体験はどんなことを感じさせてくれるだろうか。
そうした現実では不可能な体験を、やはり長い時間の流れを描いた『フォレスト・ガンプ/一期一会』の監督と主演2人が可能にしてくれるのが本作。一箇所に固定されたカメラアングルで、ひとつの場所を映し出し続ける映像を見ていると、コンセプトを理解することと、実際に体験することは、同じではないと痛感させられる。この視点に立つと何が見えてくるのか。後半、時間の在り方が変化していくという演出も興味深い。