新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! (2024):映画短評
新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! (2024)ライター3人の平均評価: 4.3
女子高生がジャーナリストの矜持を問う社会派青春ドラマ
夢見る文学少女がひょんなことから鼻つまみ者の新聞部へ入り、清く正しく美しい名門私立高校のドス黒い裏側を暴く…という痛快な青春ドラマ。権力者に都合の良い道徳と規律によって自由を束縛する全体主義と、臭いものに蓋をして体裁ばかり取り繕う事なかれ主義がまかり通り、その裏で不正を働く者ばかりが得をする。これは、そんな現代日本社会の写し鏡みたいな学園を舞台に、素人記者の女子高生たちが「権力の監視」に「真実の追求」という日本のマスメディアがすっかり忘れてしまった報道の使命を全うすべく猪突猛進していく物語。ご都合主義的な筋書きが目立つことも否めないが、しかしアイドル映画と侮ることのできない骨のある作品だ。
懐かしくも新しい良質なプログラムピクチャー
タイトルから想像させる『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』のような社会派としての小難しさはなく、異才・大野大輔の脚本作にしては、かなり直球。藤吉夏鈴という難度の高い素材を見事に調理した純度100%のアイドル映画であり、やっぱり巧い髙石あかり演じる先輩との師弟関係など、小林啓一監督なりの「傷だらけの天使」としても観ることもできる。このご時世、紙媒体愛を感じずにはいられないし、百合展開や「監獄学園-プリズンスクール-」に続き、理事長役がハマる高嶋政宏の怪演など、鈴木則文監督作など往年のプログラムピクチャーを観ている感覚にも陥るが、小林監督作らしいスマートさが際立つ。
アイドル映画のその先に+α
本作は櫻坂46の藤吉夏鈴の初出演&初主演映画であると同時に2022年の傑作恋愛映画『恋は光』の小林啓一監督の最新作でもあります。そのためアイドル映画であると同時にとても爽快で気持ちの良い青春劇に仕上がっていました。小林監督は藤吉夏鈴主演というわかりやすい”引き”を武器に高石あかりなど期待の若手演技派による社会派群像劇を創り上げましたね。しかも上映時間98分ということで一気に駆け抜ける爽快感があります。藤吉夏鈴は演技経験が豊富なわけではないですが、本作では主人公としてうまく機能していました。希望を抱かせるエンディングも好印象です。