ディア・ファミリー (2024):映画短評
ディア・ファミリー (2024)ライター3人の平均評価: 3.7
感動秘話で終わらせない
要約すれば、娘を救うために、町工場の親父が医療機器の開発を行なった奇跡の実話であり、家族愛の物語だ。だがこれまで社会派作品を数多く手がけてきた林民夫氏の脚本は、畑違いの男が、なぜ自ら開発に乗り出さなければならなかったのか? なぜこれだけの時間と金を要したのか?という、モデルとなった筒井宣政氏の前に常に立ちはだかる医学界の現実に力が注がれており、感動秘話として消化させまいとする製作陣の意思が見える。特に、本作で描かれている大学病院における研究時間と予算の減少は当時よりさらに危機感が増している問題だ。この物語が今、作られることの意義を感じずにはいられない。
奇人ギリギリのひたむきキャラを大泉洋が熱演
ある意味“神の領域”に挑んだ、実話を基にした一風変わった男による大河ドラマ。妻役が菅野美穂ということもあり、『奇跡のリンゴ』を思い起こすが、奇人ギリギリのひたむきキャラを今度は大泉洋が熱演。最初は空気に近かった研究員を演じる松村北斗の美味しさや光石研のキレ芸ほか、リアルに再現された1970年代の風景といった見どころもあるが、感動エピソードの羅列に終わっているのは否めない。どこかカタルシスに欠けるところも含め、いかにも月川翔監督作なのだが、『ラーゲリより愛を込めて』に続き、今回もすべてを丸く収めてしまうMrs. GREEN APPLEによる主題歌の破壊力が凄まじい。
ベタですけど、泣けます
命のカテーテルにまつわる実話ベースの映画化作品。映画においてここまで父親キャラを前面に押し出してきた大泉洋は初めてと言っていいのではないかという印象で、なかなか新鮮でした。かなり突飛で振り切った役柄ですが、そこは母親&妻役の菅野美穂が受け手としてドンと構えているので、バランスが取れています。カギとなる次女の福本莉子を中心に三姉妹もとても魅力的でした。彼らを囲む人々も憎めないキャラクターばかりでした。実際はここまで濃い面々ばかりではなかったのかもしれませんが、そこは映画として楽しみましょう。