プリンス ビューティフル・ストレンジ (2021):映画短評
プリンス ビューティフル・ストレンジ (2021)ライター2人の平均評価: 3
プリンスの素顔とルーツに迫る上級ファン向けドキュメンタリー
音楽界のカリスマにして希代の天才アーティスト、プリンスの知られざる素顔を、故郷ミネアポリスの隣人や友人、さらには無名時代からの成長を見届けたチャカ・カーンやパブリック・エネミーなどのインタビューをもとに紐解くドキュメンタリー。プリンス財団非公認ゆえ本編中でプリンスの楽曲は殆んど使われず、さらにモーリス・デイやアンドレ・シモンなど重要なキーパーソンの証言もなし。あくまでも「人間」としてのプリンスに焦点が当てられ、アーティスト活動についてはあまり深掘りされない。基本的に上級ファン向けの作品だが、しかしプリンスのみならずミネアポリス・サウンドのルーツを伺い知る上で興味深い情報は多い。
音楽ではなく、外枠から天才を語る妙
プリンスのドキュメンタリーを作ることは、きわめてハードルが高い。天才という題材としての難しさはもちろん、クリアすべき権利関係の問題もある。本作はプリンス財団が関わっておらず、彼の楽曲も使用できないが、ここにはそれを逆手に取った面白さがある。
生い立ちや人間像を多角度から検証。子どもの頃のプリンスを知る人物の証言や、当時のミネアポリスの人種殺別の現実を織り込み、どのようにしてアーティスト、プリンスが誕生したのかをたどっていく。
子どもの頃のプリンスの姿が思い浮かぶようなアーカイブの使用が魅力。ファンの視点が作品そのもののプリンス愛の表明とイコールになる仕様も上手い。