Ultraman: Rising:映画短評
Ultraman: Risingライター3人の平均評価: 4
育児ノイローゼになるウルトラマンを見るとは
「子育て」と「家族の再生」を通して主人公が成長していく姿が描かれる新たなウルトラマンのストーリー。育児ノイローゼになるウルトラマンを見るとは思わなかった。それだけ普遍的なテーマを扱っているということ。ウルトラマンを「人と怪獣の架け橋」と再定義しているのは、『ウルトラマンコスモス』へのオマージュかも(どこか『REX 恐竜物語』風でもある)。従来はウルトラマンをサポートする防衛軍との戦いという設定も面白い。クライマックスは日本でも人気の高かった某ロボット映画を思い出させる。シャノン・ティンドル監督のウルトラマンと日本への愛情は本物で、東京ドーム周辺の町並みまで完全に再現しているのに驚かされた。
野球のシーンがすばらしすぎ。もっと見たかったほど
なぜ主人公ケンの父はウルトラマンでケンも任務を引き継ぐのかなど、背景説明はあえてなし。多くの人はその昔、番組を途中から見たので、監督はその体験を再現したかったとか。それはそれで楽しいし、続編ができればそこで触れるのかも。ビジュアルは美しく、アニメーションスタイルは斬新。とりわけ野球のシーンの描写は、試合にしろ、テレビ中継の様子にしろ、すごすぎて感動した。日本の風景もディテールまでしっかりこだわっている。オリジナルの声優が日系人なのでキャラクターの動きはアメリカ人っぽいが(CGアニメでは先に声を録音し、その時の動画を参考に絵を作るので)、その表現豊かな動きもエネルギーを与えている。
プロ野球も東京の街並も、アメリカ人監督による再現度が奇跡的
日本の至宝であるヒーローキャラに、アメリカ人監督が深いリスペクトと愛で向き合った印象。英語版でも遵守されるシュワッチ声など「基本に忠実な精神」と、全体のキャラデザイン(監督が『KUBO』に関わったので、それらしい)や、グローバルな感動を誘引しようとする作りといった「アメリカ作品っぽいテイスト」の化学反応が味わい深い。劇画コミック風映像の瞬間的挿入も効果的。
驚くのは海外監督が日本を描いた作品としての究極のリアリティ。日本のプロ野球もそのまま球団名が登場し、大谷や松井の名も出てくる。TV中継の画面表示や、六甲おろし、そして企業や製品名の「本物」「ほぼ本物」の違いを発見するだけでテンション上がる。