FEMME フェム (2023):映画短評
FEMME フェム (2023)
加害者を悪魔化せず、ヘイトクライムの背景と本質を炙り出す
ヘイトクライムによって心と体に深い傷を負ったドラァグ・クィーン。偶然にも犯人の若者を有料発展場で発見した主人公は、復讐のためクローゼット・ゲイである加害者に素性を隠して近づく。ゲイ嫌いの差別主義者が実はゲイだったというのはよくある話。仮面を被って生きている隠れゲイほど、自分らしく自由に生きているゲイに憎悪を向けがちだ。本作はそんな理不尽な犯罪に対するリベンジドラマだが、しかしそれだけに留まらないのは、犯人が自分を偽って暮さねばならない要因、つまり今も社会に根強い家父長制や有害な男らしさなどの問題に目を向け、加害者側の孤独や痛みにも寄り添おうとするところ。犯人を悪魔化しなかったのは大正解。
この短評にはネタバレを含んでいます