第81回アカデミー賞
私的映画宣言
外国語映画賞に日本映画『おくりびと』がノミネートされ、がぜん日本での注目度がアップしそうな今年のアカデミー賞。今年は私的ライターの皆さまに、個人的にオスカーをあげたい & 下馬評からオスカー本命の作品・俳優を予想してもらいました。
今年の作品賞は驚くほどベタな作品ぞろいで、筆者のハートにビビビッときたのは親父二人のスリリングなバトルにくぎ付けとなった『フロスト×ニクソン』ぐらい。オバマ新大統領就任イヤーということで、政治モノにいくかも!? 『スラムドッグ$ミリオネア』は中身より、インドを舞台に選んだ監督のチャレンジ精神に賞を。インド映画に敬意を表して最後に歌を付けたのがこれまたエライ。個人賞はヒース・レジャー以外、みんな、老いも羞恥(しゅうち)心も気にせず、裸体を惜しみなくさらした人たちに。特にマリサ・トメイは、ストリッパー役だよ。『その土曜日、7時58分』から発情しっぱなし。しかも44歳とは思えぬほど、ええ体しているよ。その驚異のボディーだけでも賞に値するでしょう。
作品賞は、これまでの傾向から言えば、最多部門でノミネートされており、さらにアカデミー会員が好みそうなエピック・ドラマである『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』が受賞する可能性が高い。が、オバマ新政権がスタートしたことが、映画界にも何らかの影響を及ぼし変革が促されることを願って、ノミネート作品中最も映画の醍醐味(だいごみ)が詰まったエンターテインメントな快作『スラムドッグ$ミリオネア』を本命に推します! 激戦の主演女優賞は、6度目の正直でケイト・ウィンスレット。助演女優賞は、個人的にはマリサ・トメイの哀愁ストリッパーぶりにぐっときたが、今回はエキセントリックな演技が強烈なインパクトを残したペネロペ・クルスでしょうか。
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下馬評トップの『スラムドッグ$ミリオネア』は心地良さでは満点だけど、オスカーに届くには軽過ぎ? 感情の深い部分に訴える寓話(ぐうわ)『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の重厚さを熱く支持します。達観キャラをカラフルに演じたブラッド・ピットも千載一遇のチャンスをものにしてほしい。主演賞の私的な次点は、リチャード・ジェンキンス。悲し気な表情だけでアメリカの閉塞(へいそく)感を表現した渋い演技に心打たれました。主演女優賞の本命ケイト・ウィンスレットは無敵ね。嫌われ者ハーヴェイ・ワインスタイン(アメリカの映画プロデューサー)のせいでノミネートから漏れた『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』の熱演も加味されるし、もうケイトにオスカーあげようよ。で、助演女優賞は40代の美ヌードに敬意を表してマリサ・トメイに一票。ミッキー・ロークの浪速節やブランジェリーナ同時受賞といった、安いメロドラマ風な盛り上がりはご勘弁。
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例年になく高レベルな主演男優賞は、温情的にはミッキー・ロークもアリだが、純粋に演技の素晴らしさを比較すると、やっぱり、ショーン・ペンに一票(個人的には、候補外だがクリント・イーストウッドにもあげたかったよ……)! 主演女優賞のケイト・ウィンスレットは、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』と2作分でほぼ当確か。最大の興味は作品賞で、『スラムドッグ$ミリオネア』と『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』が大接戦になりそうな予感。万が一、ブラピが主演賞なら、その流れで作品も『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』だが、どっちにも転びそうなので、とりあえず監督賞と折半にしてみました。マリサ・トメイの2度目はないだろうと、助演女優賞を今年のサプライズと勝手に決め、オバマ効果でダークホースのタラジ・P・ヘンソンかヴィオラ・デイヴィスでどうでしょ?
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ムード的にCHANGEの風がアカデミー賞にも吹くのか。誰一人、セレブが出ていない『スラムドッグ$ミリオネア』がここまで来たら、一気に頂点に立つかも。しかし一方で、ポジティブなメッセージが後味さわやかだった『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のデヴィッド・フィンチャー監督がそろそろ評価されてもいいころ。ショーン・ペンは魁の政治家を演じたところが時流的にチャンスなのでは。ケイト・ウィンスレットは『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』より、こっちの演技の方が本気だったということで! ヒース・レジャーはぜひ受賞して、もっともっと人々の心にとどまり続けてほしい。ヴィオラ・デイヴィスはたった数分の出番で、作品の感動をさらに引き上げた……そんな理由です。
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『グラン・トリノ』のクリント・イーストウッドがなぜ主演男優賞にノミネートされない!? しかも『ダークナイト』の主要部門ほぼ無視ってどういうこと!? と憤りつつ、今年も思い入れ抜きの真剣予想。半分は本命寄りだが、今年の演技部門は助演男優賞を除いて激戦で予想が難しい。あえて本命を外した主演男優賞は、ミッキー・ロークがオスカー像を受け取る姿がどうしても想像できなかった。主演女優賞は『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』込み、しかも6度目のノミネートでケイト・ウィンスレットの受賞どき。助演女優賞は、ウディ・アレン作品の女優がノミネートされると5割の確率で受賞するハイアベレージを買った。
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ヒュー・ジャックマンの司会に、ブラピとアンジーのカップル受賞や天国のヒース・レジャーへの助演男優賞、さらに『スラムドッグ$ミリオネア』の異常な追い上げもあり、今年の授賞式は見ものだ。でも、作品賞は亡き映画人アンソニー・ミンゲラとシドニー・ポラックが製作した『愛を読むひと』に。監督賞は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルで、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』には脚色賞や編集賞などを大盤振る舞い。主演男優賞がミッキー・ロークなら面白そうだが、あげない方が本人のためかも。個人的には『ダウト ~あるカトリック学校で~』でわずかな出番でも大女優メリル・ストリープと渡り合ったヴィオラ・デイヴィスに助演女優賞をあげたい。それにしても、『グラン・トリノ』のイーストウッドがノミネートされなかったのは残念だ!
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作品賞候補に『ダークナイト』がない時点で今年は興ざめで、全体的にパンチ力が弱い気も。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は最多ノミート(『アビエイター』の例もあるが)、オスカーにふさわしい風格がある点で作品賞。観た人全員が大絶賛の伝記ドラマ『ミルク』のショーン・ペンの主演男優賞もカタい! また、初ノミネートの勢いも軽視できず、監督賞はダニー・ボイル、主演女優賞はメリッサ・レオ、助演女優賞はヴィオラ・デイヴィス、助演男優賞はジョーカーにあげてくれ! 個人的にはブラピとアンジーのダブル受賞で盛り上がっていいし、そもそも賞なんてお祭りのようなものなので、ついでにロバート・ダウニー・Jrの受賞があってもいいと思うけど。
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『スラムドッグ$ミリオネア』の勢いがすさまじいので、もしや作品賞? と思うも初志貫徹。主演男優賞は全米中のルーザーたちに勇気を与えているらしいミッキー・ロークが有力か。大穴でブラッド・ピットの可能性もあると思いつつ、ここは独断と偏見でフランク・ランジェラに一票。主演女優賞は、26年ぶり3度目の受賞を狙うメリル・ストリープが気になる。助演女優賞は本命不在という気がするが、いつも通りの好演が予想できるマリサ・トメイか、出番は少ないがインパクトは絶大なヴィオラ・デイヴィスか。それにしても主要部門で『ダークナイト』がほぼ無視されたことは残念な限り。ヒース・レジャーだけは当確といきたい!
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