主要部門ノミネート作品・俳優・監督紹介
第81回アカデミー賞
- 『スラムドッグ$ミリオネア』
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監督:ダニー・ボイル
キャスト:デヴ・パテル、マドゥール・ミタル、フリーダ・ピント
注目ポイント:かつて『トレインスポッティング』で世界中を熱狂させたダニー・ボイルが監督した本作。インドのスラム街出身の少年がクイズ番組のチャンピオンとなって不正を疑われるというドラマを題材に、最高傑作を生み出した。ゴールデン・グローブ賞作品賞(ドラマ部門)、批評家チョイスアワードなど前哨戦での実績も申し分なく、アカデミー賞でも本命視される。 - 『フロスト×ニクソン』
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監督:ロン・ハワード
キャスト:マイケル・シーン、フランク・ランジェラ、ケヴィン・ベーコン
注目ポイント:アメリカのインタビュー番組史上最高の視聴率を記録した、ニクソン元大統領VS.人気司会者デビッド・フロストのトーク一本勝負。伝説のインタビューとその裏側に渦巻く激しい頭脳戦をロン・ハワード監督がスリリングに描き出した。トニー賞などを受賞している人気舞台を基に、主演俳優二人をそのままキャスティング。アカデミー賞好みの政治ドラマで、受賞を狙う。 - 『ミルク』
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監督:ガス・ヴァン・サント
キャスト:ショーン・ペン 、エミール・ハーシュ 、ジョシュ・ブローリン
注目ポイント:ゲイであることをカミングアウトした政治家ハーヴェイ・ミルクの伝記を映画化。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のガス・ヴァン・サント監督が、マイノリティーの社会的地位向上のために活動したミルクの人生を感動的につづる。ショーン・ペンの熱演が高い評価を得ている上に、実在の人物を描いた作品はアカデミー賞のウケが良く、『スラムドック$ミリオネア』の対抗馬と目される。 - 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
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監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン
注目ポイント:80歳の体で生まれ、年を経るごとに若返っていく男の不可思議な運命を描いたファンタジー作品。デヴィッド・フィンチャー監督とブラッド・ピットが『セブン』『ファイト・クラブ』に続いて3度目のタッグを組む。壮大なスケールと芸術性が見事に融合し、ゴールデン・グローブ賞やイギリスのアカデミー賞でも作品賞候補となり、今年度アカデミー賞では最多の13部門にノミネートされている。 - 『愛を読むひと』
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監督:スティーヴン・ダルドリー
キャスト:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス
注目ポイント:世界的ベストセラー「朗読者」を、『リトル・ダンサー』『めぐりあう時間たち』のスティーヴン・ダルドリー監督が映画化。監督をはじめ、脚本、撮影にアカデミー賞ノミネートの実績を持つスタッフが集結し、格調高い文芸作品に仕上がった。ケイト・ウィンスレットの演技が賞賛されており、その勢いに乗りたいところ。今年度アカデミー賞のダークホース的存在。
- リチャード・ジェンキンス 『ザ・ビジター(原題)』
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(C) Jo Jo Whilden / Courtesy of Overture Films
1953年、アメリカ・イリノイ州出身。長らく舞台で活躍し、1985年に映画に進出。『ふたりの男とひとりの女』や『バーバー』など、コメディーからドラマまでさまざまな役を務めカメレオンぶりを発揮している。長い俳優人生で映画初主演を果たした本作でオスカー初ノミネートされ、アパートに侵入した不法滞在者と友情を深める大学教授を演じている。
- フランク・ランジェラ 『フロスト×ニクソン』
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(C) Courtesy of Universal Pictures
1938年、アメリカ・ニュージャージー州出身。舞台俳優として3度のトニー賞を受賞。1970年のスクリーンデビュー作『わが愛は消え去りて』でゴールデン・グローブ賞新人賞にノミネートされ、『ドラキュラ』のタイトルロールで名声を高めた。本作の舞台版では2007年にトニー賞を獲得、同じニクソン元大統領の役でオスカーに初ノミネートされた。
- ショーン・ペン 『ミルク』
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(C) Courtesy of Universal Pictures
1960年、アメリカ・カリフォルニア州出身。1981年に『タップス』でデビュー。『カジュアリティーズ』、『デッドマン・ウォーキング』と演技に磨きがかかる一方、『インディアン・ランナー』を皮切りに、監督したそのほかの4作品も評価が高い。実在したゲイの政治家を演じた本作で、『ミスティック・リバー』での受賞以来の2度目のオスカーを狙う。
- ブラッド・ピット 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
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(C) Merrick Morton / Courtesy of Paramount Pictures
1963年、アメリカ・オクラホマ州出身。1991年『テルマ&ルイーズ』で注目されると、翌年、『リバー・ランズ・スルー・イット』で大ブレイク。『12モンキーズ』でゴールデン・グローブ賞助演男優賞を受賞して、名実ともにハリウッドの顔となる。本作で80歳の体で生まれ若返っていく主人公を演じ、2度目のノミネートでオスカーを狙う。
- ミッキー・ローク 『レスラー』
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(C) Courtesy of Fox Searchlight
1956年、アメリカ・ニューヨーク出身。映画デビュー間もなく『白いドレスの女』や『ダイナー』で映画ファンの目にとまり、『ナインハーフ』などで人気が出るも間もなく低迷。本作では、当初はニコラス・ケイジが演じる予定だった落ち目の中年レスラーを演じ、すでにいくつかの賞レースを制覇。初ノミネートでオスカー大本命と目される。
- アン・ハサウェイ 『レイチェルの結婚』
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(C) Courtesy of Sony Pictures Classics
1982年、アメリカ・ニューヨーク州出身。舞台女優の母の影響で、幼少時から女優を目指す。『プリティ・プリンセス』でヒロインに抜てきされ、一気にブレイク。『ブロークバック・マウンテン』でアイドルのイメージを一掃し、『プラダを着た悪魔』の好演で地位を確立。『レイチェルの結婚』ではリハビリ中の薬物中毒患者を体当たりで演じ、アカデミー賞初ノミネートを勝ち取った。
- アンジェリーナ・ジョリー 『チェンジリング』
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(C) Anthony Michael Rivetti / Courtesy of Universal Pictures
1975年、アメリカ・カリフォルニア州出身。名優ジョン・ヴォイトを父に持つ。『17歳のカルテ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、父娘2代のオスカー俳優に。アクション大作から人間ドラマまで幅広いジャンルに挑戦し、美ぼうと演技力を兼ね備えたスター女優として名をはせる。実際の事件を映画化したクリント・イーストウッド監督作品『チェンジリング』で、母親の愛と強さを体現して賞賛を浴びる。
- メリッサ・レオ 『フローズン・リバー(原題)』
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(C) Courtesy of Sony Pictures Classics
1960年、アメリカ・ニューヨーク州出身。日本での知名度は低いが、テレビドラマや映画でコンスタントに活躍中の中堅女優。特に『21グラム』での熱演は、非常に高い評価を得た。『フローズン・リバー(原題)』はサンダンス映画祭でグランプリを獲得している秀作。スターぞろいの今年の主演女優賞候補者の中では地味な存在だが、これまでの功績を武器に大逆転を狙う。
- メリル・ストリープ 『ダウト ~あるカトリック学校で~』
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(C) Courtesy of Miramax
1949年、アメリカ・ニュージャージー州出身。ハリウッドの、いや全世界の尊敬を集める超ベテラン女優。トニー賞やピュリッツアー賞を受賞した舞台劇の映画化作品『ダウト ~あるカトリック学校で~』で厳格な女性校長を演じ、前人未到の15回目のノミネートを果たす。アカデミー賞とのきずなは深いが、受賞は『クレイマー、クレイマー』『ソフィーの選択』以来とごぶさた。3度目の栄冠なるか。
- ケイト・ウィンスレット 『愛を読むひと』
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(C) Melinda Sue Gordon / Courtesy of T
1975年、イギリス・バークシャー州出身。『タイタニック』のローズ役でおなじみ、33歳の若さで6度目のアカデミー賞ノミネートを達成した演技派女優。ゴールデン・グローブ賞では、ドラマ部門の最優秀主演女優賞(『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』)と助演女優賞(『愛を読むひと』)をダブル受賞。アカデミー賞では『愛を読むひと』で主演女優賞のカテゴリーに入ったが、これが吉と出るか否か!?
- ジョシュ・ブローリン 『ミルク』
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(C) Courtesy of Focus Features
1968年、アメリカ・カリフォルニア州出身。少年たちの冒険を描いた『グーニーズ』で映画デビュー後、数多くの作品で脇を固め、演技派俳優に成長。最近では昨年のアカデミー賞作品賞受賞作『ノーカントリー』での好演も高く評価された。今回、主人公ハーヴェイ・ミルク(ショーン・ペン)の命を奪う暗殺者を演じて念願のオスカー初候補に。
- ロバート・ダウニー・Jr 『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』
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(C) Merie Weismiller Wallace / Courtesy of DreamWorks
1965年、アメリカ・ニューヨーク州出身。1992年、喜劇王チャーリー・チャップリンの生涯を描いた『チャーリー』でアカデミー賞主演男優賞ノミネートになるも、ドラッグ問題を抱えたその俳優キャリアは山あり谷ありだった。しかし2008年、本作と『アイアンマン』の大ヒットで見事に復活。なお助演男優賞でのノミネートは今回が初めてとなる。
- フィリップ・シーモア・ホフマン 『ダウト ~あるカトリック学校で~』
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(C) Courtesy of Miramax
1967年、アメリカ・ニューヨーク出身。1990年代後半から『ブギーナイツ』『ハピネス』などでアクの強いキャラを怪演し注目を集める。『カポーティ』で主人公を演じ、見事アカデミー賞主演男優賞を受賞。今回の助演男優賞ノミネートは昨年の『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』に続き2度目で、その存在感はもはやほかの追随を許さないほどだ。
- ヒース・レジャー 『ダークナイト』
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(C) Courtesy of Warner Bros. Entertainment Inc
1979年、オーストラリア出身。『ダークナイト』撮影終了直後の昨年1月22日に28歳の若さで急死し、世界中に衝撃を与えた。今回、バットマンの宿敵“ジョーカー”に成り切った鬼気迫る怪演は、ファンや批評家を圧倒。ゴールデン・グローブ賞をはじめオスカー前哨戦となる各映画賞でも圧倒的な強さで、受賞が確実視されている。
- マイケル・シャノン 『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』
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(C) Francois Duhamel / Courtesy of DreamWorks
1974年、アメリカ・ケンタッキー州出身。1993年の映画デビュー以来、『パール・ハーバー』『ワールド・トレード・センター』といった話題作で助演を務め、フィリップ・シーモア・ホフマンらと共演した『その土曜日、7時58分』も好評だった。今回はわずか10分程度の出演ながら、心を病む繊細(せんさい)な青年を熱演し初のオスカー候補に。
- エイミー・アダムス 『ダウト ~あるカトリック学校で~』
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(C) Courtesy of Miramax
1974年、イタリア出身。数々のテレビドラマに出演後、2002年『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でレオナルド・ディカプリオの恋人を好演。『ジューンバッグ』(原題)でアカデミー賞助演女優賞ノミネートされ、さらに『魔法にかけられて』が世界的にヒットした。2度目のノミネートとなる本作では、ベテラン俳優陣に囲まれながら未熟なシスターを好演した。
- ペネロペ・クルス 『それでも恋するバルセロナ』
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(C) Courtesy of The Weinstein Company
1974年、スペイン・マドリード出身。1992年『ハモンハモン』でデビューを飾り、『オール・アバウト・マイ・マザー』でスペインを代表する女優に。ハリウッドにも活躍の場を広げた。『ボルベール<帰郷>』でアカデミー賞初ノミネート。本作では気性の荒いスペイン女を演じ、昨年オスカーを手にした恋人のハビエル・バルデムに続く受賞に期待がかかる。
- ヴィオラ・デイヴィス 『ダウト ~あるカトリック学校で~』
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(C) Courtesy of Miramax
1965年、アメリカ・サウスカロライナ出身。『トラフィック』『ソラリス』などスティーヴン・ソダーバーグ監督作品で印象を残すデイヴィスは、『きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー』でインディペンデント・スピリット助演女優賞にノミネート。本作では子どもの幸せを願う母親の役で、出演時間は短いもののアカデミー賞のほかにも初ノミネートされている。
- タラジ・P・ヘンソン 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
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(C) Merrick Morton / Coutesy of Paramount Pictures
1970年、アメリカ・ワシントンD.C.出身。テレビドラマ「ボストン・リーガル」で人気の黒人系女優。『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』では2人組の女殺し屋を演じていた。本作ではあふれる母性を持つ主人公の育ての母を好演。オースティン映画批評家協会賞を受賞し、オスカー初ノミネートとなった。
- マリサ・トメイ 『レスラー』
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(C) Courtesy of Fox Searchlight
1964年、アメリカ・ニューヨーク出身。1984年の映画デビュー後しばらくテレビドラマなどに出演していたが、1993年に『いとこのビニー』でオスカーを受賞すると徐々に演技派として定着。『イン・ザ・ベッドルーム』でもノミネートされた。3度目のノミネートとなった本作では、主人公に思いを寄せられるストリッパー役で演技力を見せつけた。
- デヴィッド・フィンチャー 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
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(C) Merrick Morton / Courtesy of Paramount Pictures
1962年、アメリカ・コロラド州出身。若くして映像クリエーターとして頭角を現し、長編2作目となる傑作スリラー『セブン』でブラッド・ピットをスターダムに押し上げた。今回は1999年の『ファイト・クラブ』以来3度目となるブラピとのタッグで、感動的なヒューマンドラマを完成させ、作風の幅広さを披露。初のオスカー候補に挙がった。
- ロン・ハワード 『フロスト×ニクソン』
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(C) Courtesy of Universal Pictures
1954年、アメリカ・オクラホマ州出身。SFから人間ドラマまで幅広いジャンルで手腕をふるい、2006年には『ダ・ヴィンチ・コード』が大ヒット。今年はその前章譚となる『天使と悪魔』も公開予定だ。今回はお得意の史実エンターテインメントで貫録たっぷりの演出力を発揮。受賞すれば『ビューティフル・マインド』以来2度目となる。
- ガス・ヴァン・サント 『ミルク』
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(C) Courtesy of Focus Features
1952年、アメリカ・ケンタッキー州出身。ノミネートは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来2度目となる。近年『エレファント』『ラストデイズ』など歴史的事件に独自の視点で切り込む作品群で高く評価される彼が今回、同性愛者であると公表したアメリカ初の政治家ハーヴェイ・ミルクの半生を王道スタイルで見事に映画化した。
- スティーヴン・ダルドリー 『愛を読むひと』
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(C) Melinda Sue Gordon / Courtesy of T
1961年、イギリス出身。舞台演出家として輝かしいキャリアを歩んだ後、2000年に『リトル・ダンサー』で映画監督デビューし、アカデミー賞監督賞に初ノミネート。ニコール・キッドマンにオスカー像をもたらした『めぐりあう時間たち』でも監督賞候補に。今回でデビュー作から3作連続でノミネートに挙がるという歴史的快挙を成し遂げた。
- ダニー・ボイル 『スラムドッグ$ミリオネア』
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(C) Ishika Mohan / Courtesy of Fox Searchlight
1956年、イギリス出身。1996年の『トレインスポッティング』で世界中にイギリス映画旋風を巻き起こし、その後もジャンルや製作国の枠にとらわれず、実験性と娯楽性をミックスさせた秀作を連発。今回はインドを舞台に、貧しい少年のピュアな恋物語をエネルギッシュに映像化し絶賛を浴びる。初のオスカー候補で、今回の最有力候補である。