追悼ポール・ウォーカー特集
昨年11月30日(現地時間)に交通事故により40歳という短い生涯を終えた俳優ポール・ウォーカーさん。映画『ワイルド・スピード』シリーズで彗星のごとく映画界に現れたポールさんは、多くのファンを魅了し愛されてきました。シネマトゥデイ編集部もまた過去数回にわたってポールさんへの取材を通してその温かい人柄に触れてきました。これまでのシネマトゥデイのインタビューを振り返りながら、ポール・ウォーカーさんという素晴らしい人物に哀悼の意を表します。(編集部・森田真帆)
「映画スターとしての僕ではない、本当の自分。僕が好きなのはそっちの僕」
生粋のカリフォルニア男だったポールさんは、スターになっても自然体。映画『ワイルド・スピード』で一躍スターとなったときも、高級ホテルの一室で行われた初来日のインタビューに彼はジーパンに裸足というラフなスタイルで登場! こんなスター、後にも先にもいませんでした。
ファンに対しても常にフレンドリーで、「車好きのファンに出会うと、つい話しこんじゃうこともあるんだよ」と無邪気に話していたポールさん。プライベートなことを聞かれても、「若い頃は特に『いいな、と思ったらとりあえずやっちゃえ!』ってタイプだった」なんてぶっちゃけ話を笑顔でしてくれるような、気持ちのいい男。映画『ワイルド・スピード』シリーズで話すスラングだらけの英語についても「もともとこんな感じだからコーチをつける必要もなかったんだ」と大笑いして話していました。どんなときでも「本当の自分」を大切にしていたポールさんだからこそ、男女問わず多くのファンに愛されていたのでしょう。
「GT-Rが大好き!マッスルカーもいいけど、やっぱりGT-Rが一番!」
映画『ワイルド・スピード』のブライアン同様、ポールさんも大の車好き。実はおじいちゃんがプロレーサーだったという彼は、子どもの頃からレースに参加していたのだとか。映画『ワイルド・スピード X2』で来日したときは、「子ども用のゴーカートみたいなのでよく遊んでいたんだけど、ある日スピードを出し過ぎて壁に激突しちゃって。あのとき、シートベルトをしてなかったら、いまこの場にはいなかったんじゃないかな(笑)。子どものころからスピードフリークだったんだ(笑)」となつかしそうに当時を振り返っていました。
高校時代は地元のサンバレーで毎週水曜日に行われていたストリートレースを楽しんでいたといい、一番のお気に入りは映画『ワイルド・スピード X2』でブライアンが乗っていた「日産のスカイラインGT-R R34」。GT-Rの話になると、目をキラキラさせて子どもみたいにおしゃべりが止まらなくなっていたポールさん。「大好きな日本車で190キロも出してかっ飛ばせるなんてないだろ? ストリートレースも青春みたいなもんだったから、大好きな車の映画の仕事で、しかも役者として主役もやれて。こんなラッキーなことってなかなかないよ」とブライアン役の醍醐味を楽しそうに話していました。
「家族のためにこういう映画を作るのもいいなと思ったんだ」
ポールさんには、元ガールフレンドとの間に1998年に生まれた娘メドウちゃんがいます。初めて来日したときは、シネマトゥデイがプレゼントした甚平を見て「すぐにでも着せたい!」とデレデレなパパの表情になったのが印象的でした! その後、高倉健の名作をリメイクした映画『南極物語』で再来日した時には、「あのときはかわいい着物をありがとう! ものすごく似合っていたんだよ」とニッコリ。「いま子どもはハワイにいるんだけど、あっちでは日本人のお友達も多くて、アニメのおもちゃをたくさん買って帰らなくちゃ」と親バカ全開でした。
ハートウォーミングなストーリーの『南極物語』のプレミアには、娘をエスコートして行ったというエピソードを披露し、「娘がとても気に入ってくれたんだ。これからは子どもが喜んでくれるような作品にも出演していきたいな」と優しい表情を浮かべて話していたポールさん。現在15歳になった娘のメドウちゃんは、父の死後、自身のフェイスブックにこんなメッセージをつづりました。「わたしが幼いころ、父は歩くこと、笑うこと、そして絶対にあきらめないということを教えた。(中略)父は私のヒーロー、本当のヒーローだったわ。私の心の中で生き続けていく。これを書きながらも、まだ目から涙があふれつづけています」
「男なんて喧嘩して長年会っていなくたって、すぐに仲直りできるものだよ」
兄貴分・ドミニクを演じたヴィン・ディーゼルは、弟分のポールさんとの仲について映画『ワイルド・スピード MAX』で9年ぶりに共演を果たしたとき、「ポールはまだまだタフガイさ(笑)。それに、おれたちは相変わらず子どもなんだよ。9年前は本物のガキだったけどさ。今は、大きくなったガキ(笑)。結局ガキのまんまでそれが最高なんだ」と話していました。兄弟のような仲の良さは会見場に置いてあった車にキーが差しっぱなしだったのを発見し、ポールさんと二人で好き放題に乗り回したこともあったという裏話からも容易に想像がつきます。ポールさんが亡くなった事故現場を訪れたヴィンは、まるでポールさんの思いを代弁するかのように悲しみをこらえながら、警察車両のマイクを握りファンに向かって感謝の言葉を投げかけたのでした。
そして、フェイスブックにつづられたヴィンの悲しみの言葉は世界中の映画『ワイルド・スピード』ファンの涙を誘ったのでした。「これからもずっとお前を愛しているよ、ブライアン。映画の中、そして私生活でも俺の弟だったお前のことを……」。
車を愛し、映画を愛し続けたヤンチャな男・ポールさんの笑顔は、スクリーンの中でいつまでも生き続けていきます。