パーフェクト・ケア (2020):映画短評
パーフェクト・ケア (2020)ライター4人の平均評価: 4.3
法の隙間をつく後見人制度の恐ろしさよ!
自活が難しくなった老人を搾取しまくる悪女をロザムンド・パイクが快演し、まさに独壇場。観客の共感など不要とばかりに主人公マーラの計算高さや邪悪な人間性を晒しまくっていて、実に潔い! マーラがご老人の財産をむしり取るテクなど明かしていいのか心配になったほど。パイクの演技と存在感が圧倒的で演技派のP・ディンクレイジやC・メッシーナが目立たないとはいえ、シニカルでひねりの効いた脚本も素晴らしく、満足度が高い。B・スピアーズの成人後見人問題でも思ったが、自活可能か否かを医師や裁判所が勝手に決め、法廷後見人にケアを任せる制度は危うい。こんな法制度はない方がいいのでは?
優雅でタフなロザムンド・パイクが無双状態!
今にも「私、失敗しないので」と言い出しそうな、優雅でタフなロザムンド・パイクが無双状態! 彼女演じる法定後見人は、後妻業にも近い悪女ながら、それが逆に気持ちよいほどで、コメディエンヌとしての魅力も満載だ。彼女にハメられ、『レクイエム・フォー・ドリーム』化していくダイアン・ウィーストも一筋縄ではいかない。前作『フィフス・ウェイブ』ではガッカリさせてくれたJ・ブレイクソン監督だが、『アリス・クリードの失踪』で魅せた小気味よい演出が復活。今回も一見地味ながら、資本主義の構造システムを批判しつつ、二転三転する展開から離せない拾いモノといえる痛快クライム・サスペンスに仕上げている。
映画史に残る最高の女性キャラクター
成年後見人制度の問題点は、最近ブリトニー・スピアーズの件でも脚光を浴びたばかり。実際に起きた出来事に想を得て書き下ろされた今作は、そこにずばりと斬り込む。裁判所、医師、高齢者施設がグルになり、弱者から利益を得ることが合法的に行われている恐ろしさ。被害者側の視点で語ったら、見ていてとても辛い映画になっただろうが、良心のかけらもない徹底した悪者を主人公にしたのが賢かった。さらに、それが女性だから最高!映画で悪女といえばたいてい色気を使うファムファタールだったけれども、マーラはレズビアンでそれもやらないのだ。マーラはハリウッドの映画史に残るキャラクターと言っても言い過ぎではないと思う。
悪徳 vs 裏社会!?
米では今年2月にNetflix配信された作品。『アリス・クリードの失踪』(09年)でデビューしたJ・ブレイクソン監督が本領発揮してくれた快作だ。高齢者を搾取する法廷後見人――合法システムに乗っかった詐欺を狡猾に働くヒロインが、うっかりロシアンマフィアに手を出してしまい、タフな攻防戦へと転がっていく展開力が見事!
最高と言うしかないピーター・ディンクレイジなど、キャストは「適材適所以上」。全体としてはシニカルな風刺劇だが、主人公マーラ(ロザムンド・パイク)と相方フラン(エイザ・ゴンザレス)の愛の絆がキモとなり、『ゴーン・ガール』(14年)より『テルマ&ルイーズ』(91年)の系譜とも言えそう。