デュアル (2022):映画短評
デュアル (2022)ライター2人の平均評価: 4
近未来映画というより、哀愁のスリラー
よくある近未来デスゲーム映画と思いきや、これは軽く予想を超えてくる。
ヒロインはほとんど笑わない不愛想なキャラで、不治の病を抱えながらも、共感を呼ぶ描き方はほとんどなされない。来たる決闘に向けて黙々と準備をするも、何を考えているかよくわからないのだが、それだけに感情が急激にほとばしるラストは強烈だ。主演を務めたK・ギランの、低体温演技も光る。
音楽は最小限で、静かであるがゆえの不気味さや異様さが際立つ、巧みな演出。それゆえに途切れない緊張感が宿る。良い人も、悪い人もいない。ここには、ただ弱い人たちがいる。
じつはシュールなブラックコメディ
“自らのクローンと闘う”という展開は、「デスゲーム映画」の進化系ともいえるが、怪作『恐怖のセンセイ』のライリー・スターンズ監督というのが肝。つまり、ディストピア映画ではあるものの、アクション寄りでなく、シュールなブラックコメディという変化球を投げつけてくる。そのため、次々と観る者を裏切る“ハズシの美学”が炸裂! 災難続きのヒロインを演じるカレン・ギランも妙に愛らしく、彼女の決闘のセンセイとなるアーロン・ポールとの訓練や掛け合いもニヤニヤが止まらない。トッド・ソロンズ監督作や『ゴーストワールド』『エイス・グレード』好きなど、刺さる人にはたまらない、思わぬ拾いモノといえる。