お母さんが一緒 (2024):映画短評
お母さんが一緒 (2024)ライター3人の平均評価: 4.7
木下惠介テイスト(ソフトなポツドール!)な橋口ホームドラマ
橋口亮輔作品はかねがね演劇、それも特に三浦大輔主宰、劇団ポツドールの赤裸々な人間(関係)描写との親和性があった。だから、その両方と縁深いペヤンヌマキ(原作舞台・脚本)とコラボをしても不思議ではないのだが、しかもそこに、すでに血肉となった木下惠介テイスト(ソフトなポツドール!)を融合、NEW橋口ホームドラマを撮ったところに“企画の妙味”を感じる。
数々の逸品を生んできた定番のシチュエーション「三姉妹もの」で江口のりこ、内田慈、古川琴音、各々の決めワザをクロスさせ、飛び道具は青山フォール勝ち。橋口監督がこれまで紡いできた「ハタから眺めれば滑稽だけど慈しみに溢れた人間模様」の成熟を見るようだ。
「やっぱり猫が好き」好きにはたまらない
『言えない秘密』「海のはじまり」の次に、まったく不幸じゃない(逆に幸せそう)古川琴音が新鮮に映るなか、公開が相次ぐなか、今回も当たりの江口のりこ主演作。まったく似てない三姉妹が言いたい放題のシチュエーションコメディだけに、「やっぱり猫が好き」好きにはたまらない一本だ。タイトルにもなっている母親が登場しない代わりに、三女の彼氏が登場して巻き込まれる展開だったり、それがネルソンズの青山フォール勝ちという絶妙なキャスティングも、妙なスペシャル感アリ。橋口亮輔監督作としてはちょっとライトな印象もあるが、捉え方次第ではいろいろとハマっている普遍的なホームドラマといえる。
家族「あるある」を超絶妙なセリフの応酬で快調ペース
オリジナルが舞台劇のためか、冒頭からセリフの妙、会話のテンポに引きずられ、その快調なノリは最後までキープ。三姉妹のキャラ設定も鮮やかなので、シーン&展開によって3人それぞれの気持ちに寄り添えたり、「いや、それはない!」と違和感をおぼえたりする瞬間が目まぐるしく変わり、飽きさせない。唯一の男性キャラの何気ない一言が作品のオアシスのように滲みわたる。旅館で大声出し過ぎ…というツッコミは、まぁ映画ってことで。
メインキャスト3人のハマリ具合は異次元レベルで、中でも江口のりこの怒り&コンプレックス表現は差し替え不能か。橋口監督らしさは不覚なタイミングに鋭く襲いかかってくる。そこを受け取るとさらに快感!