エマニュエル (2024):映画短評
エマニュエル (2024)
ライター3人の平均評価: 3.3
『恋する惑星』オマージュにゾワゾワする
舞台は『続エマニエル夫人』と同じく香港。しかも、エログロな成人映画(三級電影)で名を馳せたアンソニー・ウォンまで出演となれば、いろんな妄想を掻き立てられられるが、主演がレア・セドゥから『燃える女の肖像』のノエミ・メルランに変更されたことで、より『あのこと』のオドレイ・ディワン監督作らしい「エマニエル夫人」にアップデート。ぶっちゃけ直接的な描写は少ないものの、ウォンが“神の目”として登場する『硝子の塔』を思い起こさせる意味深なモニタールームやら、ディワン監督の『恋する惑星』リスペクトを感じる重慶マンションの深夜徘徊など、ゾワゾワさせられるシーンも多い。
オリジナル以上にドラマチックでエロチック
1974年の『エマニエル夫人』はファッションポルノの先駆けとして有名。50年後の今、そのままリメイクされても……という不安もあったが、そこは『あのこと』のA・ディワン監督、有閑マダムではなく、今を生きる女性の物語を原作小説に則って構築する。
企業社会を生きるキャリアウーマンを主人公に据え、仕事と性欲という二本の柱の間を行き来させる。女性の社会的なポジションを見据えつつ、ヒロインの心情を揺さぶるのが物語の面白さ。
官能の点もファッションにとどまらず、生々しくリアルに責めてくる。主演のN・エルランは『燃える女の肖像』以上の大熱演。オリジナル以上にドラマチックなポルノグラフィーだ。
原作のフェミニスト的視点に立ち戻った再映画化
あの『エマニエル夫人』のリメイク…というより、これはエマニュエル・アルサンの原作小説の再映画化と呼ぶべきだろう。’74年版のエマニエルは時間を持て余した裕福な人妻だったが、こちらのエマニュエルは自立したキャリア女性。高級ホテルのサービスを隅々まで厳しくチェックする品質調査官として、理不尽なルールにも黙って従って仕事をしてきた彼女が、出張先の香港のホテルで知り合った人々との危険なセックスゲームに身を投じ、初めてオーガズムを得ることで自由な生き方に目覚める。いわば、社会や組織の歯車として取り込まれた女性が、快楽を通して自分を取り戻す物語。原作のフェミニスト的な視点に立ち戻った作品と言えよう。