アンデッド/愛しき者の不在 (2024):映画短評
アンデッド/愛しき者の不在 (2024)
ライター2人の平均評価: 3
地に足がついて共感できるホラー
ジャンル的にはホラー、ゾンビものに入るが、怖さが売りではない。大切な人が亡くなったことをどう受け止めるのか。そしてもし、その人が生き返ってきたとしたら。そんなリアルな人間の心を探索するこの映画は、とても地に足がついていて、共感できる。今作で監督デビューを果たすテア・ヴィステンダールは、沈黙や「間」を取ることを恐れず、ゆっくりとしたペースで物語を展開。派手なことをやらずして、不穏、不安、緊張をしっかり高めていくのもうまい。今後が楽しみな女流監督。せりふの少ない中、今やハリウッドでも大注目のレナーテ・レインスヴェをはじめとするアンサンブルキャストは、リアルな演技を見せる。
生きているもの、生きているとはいえないもの
監督は異なるが、原作・共同脚本は『ぼくのエリ 200歳の少女』『ボーダー 二つの世界』のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。この2作同様、本作も"境界線"がモチーフで、人間と人間ではないものを隔てている曖昧な境界線が、さらにぼやけていく。しかも今回は、登場人物たちがそれぞれの立場で、境界線をどこに引いたらいいのかを思い惑う。生きているものと、生きているとはいえないものは、どこが違うのか。
そんな彼らの意識をそのまま反映して、スクリーンに映し出されるものには、見えない部分が多い。影のようなものと、そのように見えるがそうではないかもしれないものに惑わされて、映像に見入ってしまう。