日本のいちばん長い日 (2015):映画短評
日本のいちばん長い日 (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
今の国際情勢における日本の在り方も考えさせられる
ポツダム宣言の受諾から玉音放送へ至る終戦前夜の混乱を克明に描いた2度目の映画化。今まさに脂の乗りまくった原田眞人監督の、文字通り渾身の一作である。
日本の敗北受け入れがたしと右往左往する閣僚たち、本土決戦も辞さぬとの建前の裏で統率を失う軍部。その迷走ぶりを見るにつけ、自国の名誉や利益ばかりを追求した傲慢さ、つまり国際協調という概念の重大な欠如こそが、日本を無謀な戦争へと駆り立てた主な元凶の一つだったとの思いを新たにする。
そう考えれば、国体護持こそが全てと純粋に信じきってクーデターを計画した若き青年将校たちもまた国家の犠牲者であり、決して“狂気”の一言で片付けるべきではないだろう。
70年に及ぶ平和の原点。勇ましさを諌める人間天皇こそ真の主役
あの戦争を知る世代が作った1967年の岡本喜八監督版は、本土決戦も辞さない陸軍の狂気が際立っていた。本作は70年に及ぶ平和は如何にして迎えられたのかという視点に重きを置く。結論の出せないこの国のシステムを、降伏という決断に導いたのは、鈴木貫太郎首相と阿南陸軍大臣の昭和天皇との深い絆であったという人間ドラマが主軸である。葛藤しながらも勇ましさを諌め、国際感覚を持ったしなやかな思考を体現するのは、本木雅弘が繊細に演じる昭和天皇だ。ようやく日本映画が、神格化することなく天皇の人間性を描く時代になったという感慨。それは同時に、あの戦争の記憶が、遠い歴史上の出来事になりつつあるという焦燥感も抱かせる。