ミュージアム (2016):映画短評
ミュージアム (2016)ライター3人の平均評価: 3.3
監督の演出力と役者の熱演が牽引する和製猟奇サスペンス
カエルのマスクを被った連続殺人犯を追う熱血刑事が、逆に家族を誘拐され追い詰められていく。『セブン』を彷彿とさせる和製猟奇サスペンスだ。
犯人の設定や動機を含めて、荒唐無稽かつご都合主義的な点はかなり目立つ。そういう意味では、あえて犯人を得体の知れない怪物として描くことでドス黒い悪夢の世界を構築した『クリーピー』は巧かったなあと改めて思う。
とはいえ、趣向を凝らした映倫ギリギリの陰惨な残酷シーンはインパクト強烈だし、ストーリーの背景に現代社会や人間の歪んだ闇を投影している辺りも興味深い。大友監督のダイナミックな演出力と役者陣の熱演が脚本の弱点をだいぶカバーしているという印象だ。
ガチで“和製『セブン』”を作ってみた。
巴亮介の原作コミック自体、『セブン』や『SAW』を意識していたものだったが、映画化では、それを逆手に取ったシーンはあるものの、ここまで“本家”に寄せてくるとは思わなかった。ただ、低予算Vシネでなく、天下のワーナーブラザーズが予算をかけたこともあり、とにかく画に力がある。『るろ剣』以外、どうもパッとしなかった大友啓史監督作だが、今回は面目躍如。オリジナリティ溢れるとは言いにくいが、画づくりにしろ、演出にしろ、編集にしろ、いい仕事をしており、ギリギリのグロ描写にも原作ファンは納得だろう。そして、なによりブラピなりきり小栗旬と、スペイシーなりきりの妻夫木聡が苦しみながらも、楽しそうなのがいい。
殺人アーティストが夫婦の愛を過激に試す猟奇ホームドラマ
一見サイコホラーの再来のように思えるが、カエル男は動機なき狂人ではない。溜め込んできた黒い情念は、呪詛に留まらず殺人に向かった。それを自ら「表現」と呼ぶのは身勝手だが、殺人理由と死体造形は、この国の壊れゆく倫理観に対するジャーナリスティックな批評性に裏打ちされている。その矛先が、家族のために仕事に身を捧げる刑事・小栗旬へと向かう。後半は、本来は他人同士だった夫婦の愛と価値観が、過激に試される物語だ。映倫に挑み、見事“R指定無し”を獲得した、アートな猟奇描写ばかりに目がいきがちだが、接近戦主体のカーチェイスの見せ方も日本映画離れしている。原作にないエンディングが、不気味な余韻を残す。