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淪落の人 (2018):映画短評

淪落の人 (2018)

2020年2月1日公開 112分

淪落の人
NO CEILING FILM PRODUCTION LIMITED (C) 2018

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

中山 治美

「最も個人的なことが最もクリエイティブなことだ」の典型

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

オスカーでポン・ジュノ監督がM・スコセッシ監督から学んだ事として引用したこの言葉。本作も、母親が事故で車椅子生活者だった監督の体験に起因するという。その生い立ちが社会を別角度から見る目を養い、生きる意味を問う思考を育んだのだろう。人生の岐路に立っている人たちが希望を見出すまでという普遍的なテーマを真正面から堂々と、緻密かつ丁寧な人間描写で魅せる。特に登場人物たちの心を照らすかのような光や風を意識した映像が美しく、雨傘革命以降、殺伐とした香港に見慣れてしまっただけに新鮮。そこにも本当の香港の姿を記録に留めておきたいという監督個人の思いが込められているようで、胸が熱くなるのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

「人生は、そう悪いものじゃない」と思える人間賛歌

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

半身不随となってやさぐれた中年男チョンウィンとフィリピン人家政婦エヴリンが心を通わせ、「人生は、そう悪いものじゃない」と気づくまでを見守る監督の視線の優しさが伝わってくる作品だ。喧嘩もするし、不機嫌にもなる二人が徐々に互いを理解していき、やがて自分でも気付いていなかった側面に気付く過程に説得力あり! 心に染みる。香港の出稼ぎ女性をポジティブに描いた点も新鮮だ。ノーギャラ出演を快諾した大物俳優A・ウォンの繊細な演技は感動的で、香港電影金像奨主演男優賞受賞も納得。彼を援助する友人を演じたサム・リーがいい感じのおっさんになっていたのは、うれしい驚き。ラム・シュー兄さん的立ち位置を目指して欲しい!

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

とことん優しく温かい

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

一見、“香港版『最強のふたり』”ではあるが、介護する側はフィリピーナの家政婦。日曜に街中で見かける同郷の集まりなど、香港でおなじみの光景や日常も映し出される。ノーギャラで出演を決めたアンソニー・ウォンの芝居は圧倒的であり、一緒に海賊版AVを鑑賞するような悪友を演じるサム・リーとのコンビネーションも抜群! 2人の辛い過去も描かれながら、とにかく優しく温かい映画であり、他人の夢を自分の夢として応援する姿を前向きに描いたオリヴァー・チャン監督の力量は、本作がデビュー作とは思えないほど。若干、尺が長い気もするが、言葉も通じない2人の交流を丁寧に描くには、これぐらいは必要だろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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