2017年 第74回ベネチア国際映画祭コンペティション部門21作品紹介(2/3)
第74回ベネチア国際映画祭
<最優秀脚本賞>マーティン・マクドナー『スリー・ビルボーズ・アウトサイド・エビング, ミズーリ(原題) / Three Billboards Outside Ebbing, Missouri』
製作国:イギリス
監督:マーティン・マクドナー
キャスト:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン
【ストーリー】 娘を殺害されたミルドレッド・ヘイズは、一向に犯人を捕まえない地元警察にしびれを切らし、3枚のビルボード看板に抗議メッセージを掲載。メディアの注目を集める中、彼女と警察のバトルはヒートアップしていく。
【ここに注目】 『ファーゴ』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドが、タフで毒舌な母ミルドレッド役を熱演し、早くも2度目のオスカー獲得が噂されている話題作。彼女の挑発を受け止める警官役をウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルが演じるほか、ジョン・ホークス、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ルーカス・ヘッジズらが顔を揃える。監督・脚本は、『ヒットマンズ・レクイエム』『セブン・サイコパス』のマーティン・マクドナー。
『ヒューマン・フロウ(原題) / Human Flow』
製作国:ドイツ
監督:アイ・ウェイウェイ
【ストーリー】 世界中に散らばる22か国以上の国々で、行くあてもなくさすらう各国の難民たちの苦難の日々を、1年以上の歳月を費やしカメラで映しとったドキュメンタリー。祖国や家など大切なものから引き離され、新たな安住の場所を求めてさまよう6,500万人を超える人々の現実を、アイ・ウェイウェイが正面から見据える。
【ここに注目】 メガホンを取ったのは、北京オリンピックのメインスタジアム“鳥の巣”の建設に関わった中国を代表する現代アーティスト、アイ・ウェイウェイ。アフガニスタン、バングラデシュをはじめ、フランス、ギリシャ、ドイツなどのヨーロッパ、中東、アフリカ、さらにはシリアやトルコまで、およそ22か国以上の国々で撮影を敢行した本作。今世界中で最も懸念されている難民問題を扱う社会派の作品として、注目を集めることは必至。
『マザー!(原題) / Mother!』
製作国:アメリカ
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:ジェニファー・ローレンス、ハビエル・バルデム
【ストーリー】 あるカップルが暮らす家に突然、招いてもいない客がやってくる。予期していなかった見知らぬ者たちの登場により、これまで平穏だったカップルの関係は一変。2人がこれまで築いてきた絆が試されることになる。
【ここに注目】 『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督と、オスカー女優ジェニファー・ローレンスが初タッグを組んだサイコスリラー。タイトルにちなみ母の日に、自らの心臓を両手に包む血まみれのイラストポスターが公開されており、アロノフスキーの見せる新たな狂気に期待が募る。本作きっかけで交際をスタートさせたというジェニファー&アロノフスキー監督カップル共々、その動向に熱い視線が注がれる。
『サバービコン(原題) / Suburbicon』
製作国:アメリカ
監督:ジョージ・クルーニー
キャスト:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア
【ストーリー】 1959年の夏、アメリカ郊外の静かな街で、ガードナー・ロッジは妻や子供と幸せに暮らしていた。しかし、ロッジ家に強盗が押し入ったことを皮切りに、裏切りや脅迫、暴力など、平和に見えた街の暗部と隣人たちの素顔が徐々に明らかになる。
【ここに注目】 ジョージ・クルーニーの監督第6作は、マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザックら豪華布陣を揃えたクライムコメディー。ジョエル&イーサン・コーエンが1986年頃に執筆した脚本をもとに、クルーニー監督と製作パートナーのグラント・ヘスロヴがリライト。メガホンをとった前作『ミケランジェロ・プロジェクト』は興行・批評面とも振るわなかったクルーニー監督だが、本作で面目躍如となるか。
『ラ・ヴィラ(原題) / La Villa』
製作国:フランス
監督:ロベール・ゲディギャン
キャスト:アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン
【ストーリー】 マルセイユにほど近い入り江。父の最期にアンジェル、ジョゼフ、アルマンの兄妹が集まっていた。父親が築いた親愛なる世界、その理想を誰が受け継ぐかを決めるときが訪れ、レストランは年長のアルマンが引き続き任されることに。ところがそこにボートピープルがやってきて、彼らは混乱に巻き込まれる。
【ここに注目】 『マルセイユの恋』やカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映された『キリマンジャロの雪』など、故郷マルセイユを舞台に作品を撮り続けるアルメニア系フランス人監督のロベール・ゲディギャン。本作では、監督の妻であるアリアンヌ・アスカリッドやジャン=ピエール・ダルッサンなどゲディギャン作品でおなじみの実力派俳優陣が集結し、季節外れの冬のマルセイユで家族の物語が繰り広げられる。
『メクトゥ、マイ・ラブ:カント・ウノ(原題) / Mektoub, My Love: Canto Uno』
製作国:フランス、イタリア、チュニジア
監督:アブデラティフ・ケシシュ
キャスト:シャン・ブームディン、オフェーリ・ボー
【ストーリー】 地中海沿岸の故郷でバケーション中の若手脚本家アミンは、ある晩、ジャスミンという魅力的な女性と出会う。ジャスミンと映画のような出来事を経験したいという気持ちが沸き起こったアミン。時を同じくして、偶然にもデビュー作の出資をしてくれるという大物プロデューサーと知り合った彼は、計画をスタートさせるが……。
【ここに注目】 本映画祭で審査員特別賞を受賞した『クスクス粒の秘密』やカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『アデル、ブルーは熱い色』など、国際映画祭で高く評価されるアブデラティフ・ケシシュ監督の最新作。『パリ20区、僕たちのクラス』の原作を手掛け、自ら出演したフランソワ・ベゴドーの小説「La Blessure, la vraie」をもとにしているともされるが、未だ詳細はベールに包まれている。
『三度目の殺人』
【ストーリー】 30年前に殺人を犯した三隅が再び殺人の容疑で逮捕される。当初は犯行を自供した三隅だったが、弁護士の重盛と接見するたびにその証言が二転三転する。そんな中、重盛は三隅と被害者の娘・咲江との接点に辿り着いたことをきっかけに、三隅の闇にとらわれ始める。
【ここに注目】 カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『そして父になる』以来、是枝裕和監督と福山雅治の2度目となるタッグが実現。弁護士役の福山と殺人犯役の役所広司、そして被害者の娘役の広瀬すずを中心に、“真実”をテーマにした異色の心理サスペンスが描かれる。デビュー作『幻の光』がコンペティション部門に選ばれ、金のオゼッラ賞を受賞してから実に22年振りに本映画祭に帰ってきた是枝監督に、否が応にも受賞への期待が膨らむ。