2017年 第74回ベネチア国際映画祭コンペティション部門21作品紹介(3/3)
第74回ベネチア国際映画祭
『アモーレ・エ・マラヴィータ(原題) / Ammore e Malavita』
製作国:イタリア
監督:マルコ・マネッティ、アントニオ・マネッティ
キャスト:ジャンパオロ・モレッリ、セレナ・ロッシ
【ストーリー】 すご腕の殺し屋チーロは、ドン・ヴィンチェンツォ率いる犯罪組織で、ロザリオと共に“凶暴なトラ”として人々に怖れられていた。ある晩、若い看護士ファティマは、見てはならないものを目撃してしまい……。
【ここに注目】 『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』が本映画祭で創造産業賞を受賞した、マルコ&アントニオ・マネッティ兄弟が贈る社会派ドラマ。『ジョン・ウィック:チャプター2』などの国際派女優クラウディア・ジェリーニや、『グレート・ビューティー/追憶のローマ』などのベテラン俳優カルロ・ブチロッソらが共演。ナポリを舞台に、犯罪組織とごく普通の人々が暮らす世界が交錯したことによって起こる不協和音を描いた本作で、イタリア人兄弟監督が初参加のコンペティション部門で頂点を目指す。
『ダウンサイズ』
製作国:アメリカ
監督:アレクサンダー・ペイン
キャスト:マット・デイモン、クリストフ・ヴァルツ
【ストーリー】 生活コスト削減のため、体のサイズを縮小させる選択肢が与えられた世界を舞台に、男はより豊かな人生を送るべく、妻とこの画期的手術を受ける決心をする。ところが直前になって妻が翻意し、男だけが小さくなってしまう。
【ここに注目】 『ファミリー・ツリー』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペイン監督が、初めてSF的要素を取り入れた社会風刺コメディー。『オデッセイ』でも共演したマット・デイモンとクリステン・ウィグが本作では夫婦役を演じ、クリストフ・ヴァルツ、ローラ・ダーン、ニール・パトリック・ハリス、ジェイソン・サダイキスといった芸達者たちが脇を固める。今年のコンペティション部門オープニング作品。
『エンジェルズ・ウェア・ホワイト(英題) / Angels Wear White』
製作国:中国、フランス
監督:ヴィヴィアン・チュイ
キャスト:ウェン・チー、チョウ・メイチュン
【ストーリー】 小さな海辺の街にあるモーテルで、二人の女子学生が中年男性の猛攻撃を受けていた。その晩、モーテルの受付係をしていた唯一の目撃者である10代の少女ミアは仕事を失うことを怖れて口をつぐみ、被害者の12歳のウェンはその夜から危険な世界に足を踏み入れることになる。
【ここに注目】 『薄氷の殺人』などの中国インディーズ映画界の敏腕プロデューサー、ヴィヴィアン・チュイがメガホンをとって放つ問題作。急速な経済発展を遂げる中国のとある海辺の街のモーテルを中心に、ある事件に巻き込まれた二人の少女の成長を描きつつ、現代中国社会の暗部を浮き彫りにする。監督デビュー作『トラップ・ストリート(英題) / Trap Street』がトロント国際映画祭など世界中の映画祭で高く評価されたにも関わらず、中国では公開されなかっただけに、今映画祭で見事金獅子賞を獲得し、本国凱旋を果たしたいところ。
『ウナ・ファミリア(原題) / Una Famiglia』
製作国:イタリア
監督:セバスティアーノ・リーゾ
キャスト:ミカエラ・ラマツォッティ、パトリック・ブリュエル
【ストーリー】 50年前にパリ近郊で生を受けたヴァンサンは、今では彼自身のルーツにつながるすべての関係を断っていた。彼より15歳年下のオスティア出身のマリアもまた家族とは疎遠になっており、ローマで夫婦二人暮らしをする彼らは、はた目には幸福そうに見えていたが……。
【ここに注目】 アシスタントディレクターや脚本家としても活躍し、第67回カンヌ国際映画祭で国際批評家週間にノミネートされた経験を持つセバスティアーノ・リーゾ監督による人間ドラマ。ローマで暮らす一見幸せそうに見える夫婦が、本当の“家族”になるために新たなステップを踏み出す様子を描写する。『歓びのトスカーナ』などで注目を集める実力派女優ミカエラ・ラマツォッティと、『ニュー・シネマ・パラダイス』などで知られるベテラン俳優マルコ・レオナルディの豪華共演に期待が高まる。
『ファースト・リフォームド(原題) / First Reformed』
製作国:アメリカ
監督:ポール・シュレイダー
キャスト:イーサン・ホーク、アマンダ・セイフライド
【ストーリー】 息子を亡くし、悲しみに打ちひしがれていた元従軍牧師のトラーは、夫が他界した女性と教会で出会い交流を深める。しかし、教会と悪徳企業との間に隠蔽された秘密があることを知り、トラーは共謀関係の真相を探り始める。
【ここに注目】 マーティン・スコセッシ監督と組んだ傑作『タクシードライバー』『レイジング・ブル』の脚本家で、『アメリカン・ジゴロ』の監督としても知られるポール・シュレイダーが、自らの脚本をもとにメガホンをとったサスペンス。主人公トラーをシュレイダーが当て書きしたというイーサン・ホークが、環境保護活動家の夫を自殺で亡くした女性をアマンダ・セイフライドが演じている。
『ザ・レジャー・シーカー(原題) / The Leisure Seeker』
製作国:イタリア
監督:パオロ・ヴィルズィ
キャスト:ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド
【ストーリー】 熟年夫婦エラとジョンは、彼らの体調を心配する医師や成長した子どもたちの過剰な干渉に耐えきれずに家を飛び出す。二人が“レジャー・シーカー(愛すべき人生の探索者)”と親しみを込めて呼ぶ古いキャンピングカーに乗り、アメリカ東海岸のボストンからフロリダ州キーウエストへと旅に出る。
【ここに注目】 オスカー女優ヘレン・ミレンと、二度ゴールデングローブ賞に輝いたドナルド・サザーランドが夫婦役を演じ、マイケル・ザドオリアン原作の小説を映画化したヒューマンドラマ。年代物のキャンピングカーで、アメリカ横断の冒険に旅立つ夫婦の忘れがたい体験を映し出す。『歓びのトスカーナ』がイタリア・アカデミー賞“ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で5部門受賞するなど、高い評価を受けたイタリアの名匠パオロ・ヴィルズィ監督がハリウッドと手を組み、満を持して本映画祭の最高賞である金獅子賞を狙いにいく。
『エックス・リブリス ザ・ニューヨーク・パブリック・ライブラリー(原題) / Ex Libris - The New York Public Library』
製作国:アメリカ
監督:フレデリック・ワイズマン
【ストーリー】 様々なジャンルの電子書籍や、インターネットでは入手困難な資料アーカイヴを所有するニューヨーク公立図書館。パティ・スミス、エルヴィス・コステロ、タナハシ・コーツの講演なども主催する、同館の多彩な魅力に迫る。
【ここに注目】 『パリ・オペラ座のすべて』『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』などを手がけてきた、ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン。50年ものキャリアを持つワイズマン監督の新作は、伝統を守りながらもデジタル時代に沿った変革を続けるニューヨーク公立図書館にスポットを当てる。ちなみに、ワイズマンは2014年の第71回本映画祭で栄誉金獅子賞を、今年の2月に行われた第89回アカデミー賞授賞式ではでアカデミー名誉賞を受賞している。