エターナル・サンシャイン (2004):映画短評
エターナル・サンシャイン (2004)ライター2人の平均評価: 4.5
「恋とは」というテーマをオリジナルな形で語る
記憶を消し去ったのに、知らない者同士としてまた出会ったら、また惹かれてしまう。恋の始まりにおけるそんな本能と運命の力、さらに、それを育てていく上で起こりがちな事柄を語るのが今作。映画の途中には、チャーリー・カウフマンらしい、ユニークでシュールリアルなシーンが盛りだくさんで、それらはビジュアル的に楽しいが、テーマ自体は地に足が着いていて、かつ、ロマンチックだ。悲しい思い出、嫌な思い出も、それらがあるから、今の自分がある。この広い世界で出会うご縁があった人は、誰のことも、「いなかったこと」にするべきではないのだと、あらためて思う。
忘却は許すことであり、よりよき前進を生む。
失恋の辛さから、相手を忘れるべく記憶除去手術を受けるブッ飛んだSF設定ながら、今も珠玉のラブストーリーとして語りたくなる理由。それはタイトルの元ネタであるアレクサンダー・ポープの詩の一節「忘却は許すこと」をテーマに、誰もが思い当たる人を恋愛のリアルが凝縮されているためだ。ミシェル・ゴンドリー監督の映像センスはもちろん、入り組んだ時系列の目安となる紅葉のようにヒロインの感情の変化を表した髪の色から、どちらの解釈もできるラストまでチャーリー・カウフマンの脚本がスゴすぎる。“互いの欠点を許すこと”も訓えてくれる一編だけに、大切な人に簡単に会えないこの時期、じっくり噛みしめたい。