天井桟敷の人々 (1945):映画短評
天井桟敷の人々 (1945)通俗的なメロドラマの隅々に溢れるフランス民衆のパワー
ナチスドイツ占領下のフランスで作られた「詩的リアリズム映画」の最高傑作。19世紀前半のパリ、シャイで純情なパントマイム俳優、権力を憎む義賊的な犯罪者など4人の男たちが、誰のものにもならない運命の美女を巡って愛と友情と憎しみと裏切りの物語を繰り広げる。一見したところ通俗的なメロドラマのようだが、しかしマルセル・カルネ監督は、舞台となる繁華街の雑踏や芝居小屋の天井桟敷(格安な観客席)に集う貧しい庶民の逞しい生命力に、フランス革命以来となる民衆の抵抗と反逆の精神を投影する。ナチスの圧政に苦しむ当時のフランス国民へ向けて、いま一度民族の誇りを思い出せと言わんばかりに。(Amazon Prime)
この短評にはネタバレを含んでいます