トスカーナの贋作 (2010):映画短評
トスカーナの贋作 (2010)虚と実のはざまを愉しむユーモア溢れる快作。
徹底的に「本物と贋物」についての認識論がつきまとう。トスカーナへ講演に訪れた英国人作家(普通の俳優以上に映画が似合う本職オペラ歌手、W.シメル)が、仏人女性(嫌味なくらいに映画女優なJ.ビノシュ)と出会い芸術的議論を闘わせながら恋に落ちていく…物語的にはそんな展開で始まるものの、ふと入ったカフェで夫婦と間違われてから亜空間へと突入。最初は夫婦ごっこしはじめたようにみえるが、次第に本当の夫婦でしか知り得ないような内容が混じりだしていくのだ。もちろん決着なんてつかない。つまりは「本物と贋物」「虚と実」の間にこそ映画は存る!というキアロスタミがイランで40年来試してきたことの延長線上なのだから。
この短評にはネタバレを含んでいます