ひまわり (1970):映画短評
ひまわり (1970)ライター2人の平均評価: 4
世界で最も日本人に愛される戦争メロドラマ
日本ではいまだ根強い人気を誇る作品だが、それに比べて海外での評価が必ずしも高くないのは、同じ巨匠ヴィットリオ・デ・シーカの代表作のひとつ『ふたりの女』が第二次世界大戦におけるイタリア庶民の加害者としての側面、つまりファシズムの台頭を許し戦禍の一因を作った罪や責任にまで厳しく言及したのに対し、被害者としての側面ばかりに焦点を当てたメロドラマに仕上げられているからだろう。逆に、その口当たりの良さが日本人の好みだったとも言える。とはいえ、時代の荒波や国家の思惑を前に個人が無力であることもまた事実。だからこそ一人でも多く声を上げることが大切だと胸に刻みつつ、戦争に翻弄された男女の悲劇に涙したい。
HDレストア版で甦る、イタリア映画の教科書
戦争によって引き裂かれる男女の悲恋ドラマに、国民的な美人女優が魅せる圧倒的な存在感、そして映画音楽界の名匠が奏でる哀愁のメロディー……。そんな『シェルブールの雨傘』と共通するあたりが、世代を超えて愛される(特に日本で!)理由である、イタリア映画の教科書的一本。デ・シーカ監督、晩年期の作品だけに、モノクロの記録映像も盛り込んだネオレアリズムだけでなく、叙情的なメロドラマや微笑ましい艶笑コメディ要素も織り込まれたキャリア集大成的な意味も強く、初見でもかなり観やすいのは事実。さらに、今回は公開50周年記念のHDレストア版だけに、鮮烈に甦った広大なひまわり畑に息を呑むことだろう。