バーニー/みんなが愛した殺人者 (2011):映画短評
バーニー/みんなが愛した殺人者 (2011)ユニークな題材の核心部分に今ひとつ及ばず
町で一番愛される善良な男が町で一番嫌われる意地悪婆さんを殺してしまった事件の顛末を描く。テキサスで本当にあった出来事らしく、そのあらましはなんともシュールで興味深い。そもそも、この善人バーニーが本当に心の底から親切なのか、それともただ単に善人を演じて周りからチヤホヤされたいだけなのかが怪しいところなのだ。意地悪婆さんマージョリーにしたって、欲の深い家族や親戚、世間に嫌気がさして性格の歪んだ孤独な老女にも思える。その辺のグレーゾーンな性格描写は芸が細かい。ただ、この作品は擬似ドキュメンタリー風のトリッキーな演出やシニカルなユーモアに偏り過ぎてしまい、結局主人公2人の素顔、彼らがお互いに惹かれ合いながらもなぜ惨劇に至ってしまったのかという内面的な核心にまで踏み込むことが出来なかった。ジャック・ブラックははまり役。演技陣が揃っているだけに、語り口の物足りなさが惜しまれる。
この短評にはネタバレを含んでいます