光のノスタルジア (2010):映画短評
光のノスタルジア (2010)宇宙の広大さと、今、此処が交差する
通常「ドキュメンタリー」という語から連想される映画とは、異なる。画面にはそこにあるものが映し出されるのだが、この映画が描こうとするものは、画面には映し出されない。画面は、壮大な宇宙の営みと、小さな人間の営みとを、並列に並べてみせる。「光のノスタルジア」のチリの砂漠には、何万年も前に発せられた宇宙からの光が届き、独裁政権が多数の死体を遺棄し、それぞれを追う人々がいる。「水のボタン」のパタゴニアの海には、ビッグバンに起原を持つ水があり、独裁政権が捨てた死体のボタンが沈み、海を奪われた先住民が住む。どの光景も圧倒的な強度で目の前に迫り、あるときは美しく、あるときは恐しく、けして叙情には流れない。
この短評にはネタバレを含んでいます