別離 (2011):映画短評
別離 (2011)イスラーム社会ならではのミステリ、なのに。
「子供のため」という名目で、海外移住許可が切れる前に出国したい妻、アルツの老父の介護のためイランに残ると譲らない夫、離婚危機に陥った父母のはざまで惑う11歳の娘。その老父の介護人として雇われた女性と、失業中の夫。……前半だけ見ると、イランにおける社会問題を扱った映画に見え、それはそれで興味深い。だが、この二組の家族が、あるできごとをきっかけに告訴沙汰へと発展。「守るべきひと・もの」のためについた嘘が彼らを翻弄していく、という人生の皮肉そのものなプロセスは実に普遍的。それでもやはり「謎解き」の核心には、イスラーム社会、イラン社会ならではの特殊な事情が絶大に存在するのだ。
この短評にはネタバレを含んでいます