素敵な相棒~フランクじいさんとロボットヘルパー~ (2012):映画短評
素敵な相棒~フランクじいさんとロボットヘルパー~ (2012)ライター2人の平均評価: 4.5
爺さんがロボットを悪用してますよ〜
ロボットと爺さんが向かい合うポスターを見て、てっきり矢口史靖監督『ロボジー』がハリウッドでリメイクされたのかと勘違い。だが、ぶっ飛び具合はミッキー・カーチスがロボットの中に入ったそれ以上。元宝石泥棒の爺さんが、ロボットを悪用して再び悪事に手を染めるコメディだ。来る“一家に一台お手伝いロボット時代“に、模倣犯も続出しかねない?なかなかの問題作である。
とはいえ本作の主題は親子の確執であり、介護問題にある。そもそも爺さんがロボットと出会ったのは、物忘れがひどくなった父親を管理すべく、息子がヘルパー用にと購入したのがきっかけだ。そんな思惑に反発した結果がロボットの別の使い方であり、共に犯罪を重ねることで、皮肉にもかつての興奮を呼び覚まし、精気を取り戻していく。年老いた親を見ると、子供はつい老人扱いしがちだ。だがそれが、必ずしも本人の為ではない事を考えさせてくれる。もちろん、倫理的に泥棒を容認するのはどうかと思うが。だが本作の場合、なんとなく家族が丸く収まるので、寛大な心で見守ってあげよう。
ロボットが教えてくれるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)
米演劇界最高峰のトニー賞3度の受賞。舞台版と同じ役を演じてアカデミー賞候補にもなった『フロスト×ニクソン』も神演技だったフランク・ランジェラが、「元宝石泥棒で最近物忘れがひどくなった頑固老人」を演じる人間ドラマ。それだけで笑ってホロリの名演を期待してしまうのだが、安心してよし! ランジェラの仕事ぶりに心配など杞憂である。
一人暮らしを心配して息子がよこしたロボットヘルパーとフランクの関係は、反発→相棒になる過程も愉快だが、新鋭シュライヤーとフォードの監督&脚本コンビはもうひとひねり。人が真に人間らしい生活を送る=QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の意味を、息子でも娘でもなくロボットが教えてくれるのである。ASIMOに似た、無表情なのに妙に愛嬌のあるロボットに学ぶこと多し。
奇想天外でおかしな物語は、やがて哀切に変わる。しかし、映画は最後までしゃれっ気とウィットを忘れない。フランクじいさん=ランジェラ、最高です! 共演のジェームズ・マースデンにリヴ・タイラー、そしてスーザン・サランドンは流石の存在感でキャストのアンサンブルもよし。