リアル・ペイン~心の旅~ (2024):映画短評
リアル・ペイン~心の旅~ (2024)ライター2人の平均評価: 4.5
“監督/脚本家”アイゼンバーグがますます実力発揮
ジェシー・アイゼンバーグの監督としての成長ぶりは明白。「僕らの世界が交わるまで」では監督/脚本に徹したが、今回は主人公デヴィッド役も兼任。奔放でチャーミングな反面、心に深い傷を抱えるベンジーを演じたキーラン・カルキンは絶賛を浴びるに値するが、内向的で実は同じくらい複雑なデヴィッドとの絡みがあってこその物語なのだ。そしてこのふたりはまさにはまり役。アイゼンバーグの非常にパーソナルなところから来ている話とあり、脇役たちも良く書かれていて、キャスティングも絶妙。ふたりが電車を乗り過ごすシーンを提案したのは、「僕らの世界〜」に続き今回も製作に携わったエマ・ストーンだったとか。
痛いほど共感させる術を軽やかに成し遂げる、やはり彼は天才
NY→アウシュヴィッツの旅はあくまで「設定」。現地の光景がポイントとなるものの、最も心に沁みるのは主人公2人の性格描写に尽きる。すべて正反対の従兄弟。何かと極端に行動する“お騒がせ者”ベンジーに対し、冷静に彼をたしなめつつ、その自由さを羨むデイヴの心情が、いくつかのシーンであまりに痛く伝わる。監督・脚本のJ・アイゼンバーグが自身を重ねたとはいえ、多くの人が他者に感じるコンプレックス、根底でのたがいへの愛情、そして一定の距離感…と様々な心情をショパンの曲とともにドラマに乗せた“超映画的”才能に感動。
無敵の遠慮なさの裏に、哀しみを潜ませるベンジー役のK・カルキンは助演男優賞レースの最有力だろう。