LIFE!/ライフ (2013):映画短評
LIFE!/ライフ (2013)ライター3人の平均評価: 4.3
ウェス・アンダーソンにも通じるセンスの良さ
まるで自己啓発映画みたいな売り方をされているが、お題は過去にスピルバーグやロン・ハワード、ゴア・ファービンスキーらの名が挙がりながら頓挫したファンタジーのリメイク。そんな難題にハズレなしの“監督ベン・スティラー”が挑んだだけに、とにかく本気度が伺える。
出版や映画だけでなく、各業界震撼中のアナログからデジタルへの移行という進行形の問題をテーマに、随所にブッ込んでくる毒っ気は若干抑え目。一方、画作りや音楽の使い方など、ベンが敬愛するウェス・アンダーソン監督作ばりのセンスの良さが光る。だが、アンダーソン作品同様、まとまりの良さが、どこかパンチ不足に感じてしまうところが難点である。
ベン・スティラー流、もはや「芸術」だ!
乱暴に言えば、ベン・スティラーが「芸人」から「アーティスト」へ転化してみせた一本だろう。『ズーランダー』を頂点に置く“スティラー史観”からすると立派過ぎるが、独自の才気が発揮された傑作には違いない。
ベースは『虹を掴む男』だが、ダニー・ケイの映画からは65年以上。『LIFE』誌の休刊(実際は07年)を背景にメディアの移行期というテーマを導入しつつ、内容もモラトリアム中年の通過儀礼に改造。とにかく現代性が高い。
小ネタも爆発しており、「トム少佐」の前フリからデヴィッド・ボウイの名曲「スペース・オディティ」を驚きの形で使用するシーンは超鳥肌もの! むろん単純に、元気の出る映画としてもおすすめ。
コツコツと真面目に生きる人々こそ素晴らしい!
かつて「虹を掴む男」として映画化された物語の現代版。地味で気弱で不器用な中年男が、奇想天外な冒険旅行を通じて逞しく成長していく。
とはいえ、本作は“勇気をもって一歩踏み出せば誰でも成功できる、誰でも夢が叶う”などと無責任なことは言わない。むしろ、その他大勢の名も無き人々の努力と献身があるからこそ、誰かが成功できる、誰かが夢を叶えられる。だからこそ、たとえ日陰者でもありのままの自分に誇りを持つべきだと語りかける。
現代社会の不公平に批判の目を向けつつ、決して前向きなユーモアを失うことなく、自由奔放な表現力で“真面目に生きる”人々へエールを送るベン・スティラーの演出は見事というほかない。