31年目の夫婦げんか (2012):映画短評
31年目の夫婦げんか (2012)R60/熟年夫婦の回春騒動記
題名に釣られ、倦怠期の中高年夫婦が解決策を求めて劇場に足を運べば、ますます気まずい空気が漂い始めるに違いない。原題は「HOPE SPRINGS」。希望が湧き出る? いや、SPRINGには「精力」「活力」「跳ねる」「そびえ立つ」という意があることを知っていれば、この映画の実態が『R60/おしどり熟年夫婦の回春騒動記』であることは自ずと分かるはずだ。
日本なら、夫にバイアグラかシアリスかラビトラあたりを処方するかもしれないが、妻メリル・ストリープは夫トミー・リー・ジョーンズを連れて高額のセラピストを訪ねる。しかもそのセックスレス解消指南役は、スティーヴ・カレル。互いが心に秘めてきたことを言葉にし合うわけだ。2人のオスカー老優が妄想を口にして、さらに、あんな痴態こんな行為の実践に及ぶ…。『奇人たちの晩餐会』で映画館デートの最中、ストリープが勇気を出して挑むある行動へのジョーンズのリアクションに、失笑は冷笑に変わった。
キテレツな方向へ突き抜ければカルト化したかもしれないが、品行方正に“結婚し直す”大団円へともっていく、あくまでもハリウッド調人生讃歌のコミカル・ファンタジーである。