永遠の0 (2013):映画短評
永遠の0 (2013)結果的に「日本を取り戻す」意識の強化に奉仕する感動の大安売り
三丁目、ヤマト、そして零戦…日本人が愛おしむ過去をCGで情緒過多に再現するVFXマン・山崎貴監督作品として一貫している。愁嘆場のつるべ打ち。感動映画製造職人が「戦争」と結び付いた今、流した涙の意味に慎重であらねばならない。
トラウマを与えなければ戦争映画としては不十分な趨勢から逆行している。「特攻」を否定するなら、家族や戦友との絆を美しく描くだけでなく、なぜ主人公の酷たらしい死体すら見せないのか。表面的に反戦を唱えながらも、結果的に「日本を取り戻す」民族意識の強化に奉仕する巧みなプロパガンダだ。若者の曖昧な生に輪郭を与えるために、この国の空に再び戦闘機が舞う時代が来ないことを願う。
この短評にはネタバレを含んでいます