フローズン・グラウンド (2013):映画短評
フローズン・グラウンド (2013)ニコラス・ケイジ久々の好演
実在の連続殺人鬼を題材にした作品は数多い。だが、本作は犯人の異常心理に焦点を当てるのではなく、唯一生き残った被害女性が捜査協力の過程で立ち直っていく姿を主軸にしつつ、そんな彼女を精神的に支える担当刑事の目を通して殺人鬼を野放しにしたアメリカ社会の偽善を直視していくという点で異色だ。
犯人のロバート・ハンセンは24人以上の若い女性を殺害し、レイプした上で狩りの標的にして殺害した。だが、その凶行は長いこと誰からも気付かれなかった。それは彼が表向きは善良な家庭人だったこと、そしてなによりも犠牲者が社会の底辺に生きる売春婦ばかりだったことが理由だ。本作は様々な事情で体を売るしか生きる術のない生存者シンディら不幸な若い女性たちに寄り添いつつ、そんな彼女らを虫けら同然に扱う犯人や社会の非情さを強く糾弾する。これは猟奇サスペンスの体裁をとったフェミニズム映画だとも言えよう。
シンディの歩んだ転落の道は、若い女性の誰にでも起きうる悲劇だ。そのことを深く理解し、犯人逮捕に執念を燃やす刑事ジャックをニコラス・ケイジが人間味豊かに演じる。このところ精彩を欠いてばかりだった彼にとっては久々の好演だ。