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エベレスト 3D (2015):映画短評

エベレスト 3D (2015)

2015年11月6日公開 121分

エベレスト 3D
(C) Universal Pictures

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.2

なかざわひでゆき

登山の危険と怖さは充分に伝わってきます

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1996年に起きたエベレスト遭難事故の一部始終を3Dで再現したアドベンチャー映画。多くの犠牲者を出した悲劇をエンターテインメントとして描くことに疑問を抱く向きもあるだろうが、当時の関係者も製作に携わった本作は、予測不可能な大自然の恐ろしさを知らしめる啓蒙映画としての側面が強いと言えよう。
 BBCアースさながらの雄大な実写ロケにCGや特殊効果を融合した映像はなかなかの迫力。特に後半の猛烈な嵐と吹雪のシーンは、容赦ない自然の脅威を肌身で実感することができる。アクの強い役者を揃えた群像劇の面白さが希薄になってしまった感は否めないものの、山を甘く見ちゃいかんという戒めは充分に伝わる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

やはり、監督の人選ミスだったか?

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

本作の監督が、荒削りなアクション映画が得意なバルタザール・コルマウクルなのは意外かもしれないが、母国アイスランドの漁船沈没事故を扱った『ザ・ディープ』(ジャクリーン・ ビセットは出てない!)を観れば、起用理由がよく分かる。そのため、極限状態のなか、「自分だったら、どうする?」と観客に感情移入させる演出は手馴れたものだ。だが、事実とはいえ、主要キャラを絞りきれなかった脚本のユルさに加え、群像劇としての演出が相変わらずイマイチということもあり、どこか散漫な作りになってしまった。そのためか、このテの作品に必要不可欠なカタルシスにも欠け、8名の死者を出した悲劇のみを描いた印象は否めない。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

極限下で人間の心に何がよぎるのか?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

命をかけて高峰登頂に挑む気持ちは登山者でないと理解できないと思うが、本作はエベレスト大量遭難事件を軸に当事者たちの内面に切り込む脚本が素晴らしい。極限下で危険にさらされた人間はどのような心境に陥るのか? 想像を超える事態が恐ろしさとともに深い感動ももたらす。B・コルマウクル監督といえばアクション映画のイメージが強かったが、人間の心の綾を丹念に描ける手腕の持ち主と見直した。実際にエベレストで撮影された映像も自然の美と厳しさを伝えていて、厳しい状況で演技を披露した役者陣に感心した。商業登山への批判は多いが挑戦を止めることはできないだろう。ならば事故を教訓にしてほしいと切に願うのみだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

エベレストは美しく、何気なく恐ろしい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 雪の高山は美しく、そこでは人間の生命はとても脆い。それを最先端の特殊効果映像と3Dで体感できる。映画がドキュメンタリーのように静かに淡々と描かれていき、いわゆるエンターテインメント的な派手な演出が控えめなのは、これが実話に基づく物語であるからだけでなく、監督バルタザール・コルマウクルが北欧アイスランド生まれで、寒さというものをよく知っているからではないだろうか。人間たちは、本人にもよく説明できない欲求に動かされて高山に登って行き、帰って来れたり、来れなかったりするが、その分岐点となるのは大きな出来事ではなく、ふとした行為だ。そのなにげなさが、リアルに描かれている。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

実話をアトラクション感覚で見ることの戸惑い

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 3Dで世界最高峰の山を見せるのがウリ。S・スタローン主演『クリフハンガー』(93)を思い出した。だがこれは、あくまで実話の映画化。1996年の遭難事故により、8人の登山家が犠牲になった。その中には日本人もいる。3Dの恩恵をあまり感じないだけに、尚更、企画として正解?と、疑問を抱かずにはいられない。
 見るべきは、過信や傲慢が悲劇を呼んだという人間の愚かさ。そして、いざとなれば夢以上に、権力と金がモノを言う現実だ。同じ過ちを繰り返してはならないという願いは当然込められているのだろうが、それ以上に「覚悟をして登れよな」という脅しの方を強く感じる。雪山シーズンを前に、何よりの教訓映画となるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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