ある愛へと続く旅 (2012):映画短評
ある愛へと続く旅 (2012)壮絶な悲しみを乗り越え、女性たちは次世代へ命をつむぐ
むせ返るほど濃密な男女の愛を描いた『赤いアモーレ』(04/監督第2作)のセルジオ・カステリットの新作。かつこの邦題から再び濃厚なラブストーリーを想像したが、中盤以降でがつんと衝撃をくらった。そのヘビーさは、本作の背景となっているボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争の、その後を描いた秀作『サラエボの花』(07)に匹敵する。
例えようもなく、女であることが悔しくて悲しくていたたまれなくなる映画だ。同時に、主人公ジェンマだけでなく本作に登場する女性たちのたくましさ、生きる力には圧倒される。これほどの苦難を乗り越え、とてつもなく深い愛情をもって次の世代へ命をつないでいこうとする姿の、なんと尊いことか。
20年にも渡る歳月を力強く演じ切ったペネロペ・クルスに対して、恋人役エミール・ハーシュの純真さともろさがはかなくも繊細な演技がいい。俳優歴の方が長いカステリットは監督としても魅力があるが、『赤いアモーレ』と同じく彼の妻の小説を共同脚本で映画化した本作は、より強い女性の視点と社会派の要素がよく作用しており、情熱的な愛の物語が普遍性のある人間ドラマへと昇華している。