ザ・ベイ (2012):映画短評
ザ・ベイ (2012)ライター2人の平均評価: 4.5
ファウンドフッテージ系ホラーはかくあるべし
「レインマン」や「バグジー」の名匠による低予算のホラー・モキュメンタリー、という意外性に少なからず興味を惹かれたわけだが、さすがはアカデミー賞監督、「パラノーマル・アクティビティ」などと比べてもクオリティのレベルが違う。
実在する肉食バクテリアが突然変異し、海水や水道水を介して大勢の人間を体内から食い殺していく。港町の平和な日常風景が徐々に阿鼻叫喚の地獄絵図へと変貌していく描写は、思わずフェイクであることを忘れてしまうくらい徹底的にリアル。環境破壊や権力の隠蔽体質に対する監督の強い問題意識が貫かれている。生水や海水を口に含むのが不安になること必至だ。
フェイクに甘えない名匠の本気に唸る
猫も杓子もフェイク・ドキュメンタリーで、ホラー・ファンとしては食傷気味だが、それでも鬼才が撮ると見応えのある作品になるという見本。アカデミー賞監督バリー・レビンソンの意気込みが伝わる力作となった。
田舎町の大パニックをとおして描かれるのは、環境破壊と体制の隠蔽体質。訴えたいものがしっかりあるだけでなく、寄生虫が引き起こす惨劇の描写も本格派で、85分間緩む間がない。
所詮はフェイクだから嘘を楽しみましょう…という考え方もアリだと思うが、本作にはそういう甘えがない。フェイク・ドキュメンタリーの指標となるべき逸品。