春を背負って (2014):映画短評
春を背負って (2014)ライター2人の平均評価: 2.5
あなたの素直さが試されます。
松山、蒼井、豊川、この三人の無邪気なまでの“ありのまま”さがじつに微笑ましい。でもこの多幸的なユルさはあまりに浮世離れしちゃいないか。脇役に至るまでみんな、人間は山に行けば浄化されるものだとハナから決めつけた、とにかく判ったような口しか利かない奴ばかり。まっとうで曇りのない台詞しか言わないし、それがどうにも薄っぺらすぎてイライラする。役者を何時間も山登りさせれば何かが変わる、と思いこんでる演出も大いに疑問(そのくせ山小屋シーンはスタジオ撮影って)。松ケンがしばしば見せる「俺、なんでこんなことやってるんだろ」的な、半ば演技することさえ疲れた表情が素晴らしくリアルである。
心の汚れに気づかせてくれるクレンズ映画
『劔岳 点の記』で厳しい冬山と対峙した男たちの苦行に感動した身なので、木村大作監督の新作にワクワク。その期待は、いい意味で、大きく裏切られた。監督が重きを置いたのはドラマティックな展開ではなく、立山連峰にある山小屋を軸に自然と寄り添いながら生きる人間の淡々とした営みだ。人によっては退屈と感じるかもしれないが、自然をあるがままに受け入れ、共存する姿勢を忘れてはならないと再確認させられた。合間に挿入される美しい風景、そして邪気のない登場人物を見ると汚れきった自分に気づき、猛反省しきり。最近、弾丸登山なんてのが流行しているらしいが危険な気が……。私は絶対に山小屋のひとときで心を浄化しようっと。