SHORT PEACE (2013):映画短評
SHORT PEACE (2013)ライター2人の平均評価: 3.5
フェティシズムの極致。最大の収穫はカトキハジメの廃墟バトル
森本晃司による夢幻的OPで幕を開け、森田修平『九十九』×大友克洋『火要鎮』×安藤裕章『GAMBO』×カトキハジメ『武器よさらば』で構成されたオムニバス・アニメ。4作品に通底するのは、この国の刹那の平和=安息の形だろう。『MEMORIES』(95)の熱量と毒には欠けるが、物語よりも動きよりも、モノへの偏愛に満ちている。着物、火、妖怪、メカなど素材の質感にこだわるフェティシズムこそ、日本のアニメの真骨頂という企図から、“海外映画祭向け”というキーワードはちらつく。
絵巻物という横スクロールの古典フォーマットで昭和初期の時代劇映画を再現し、禍々しい災の大スペクタクルを組み合わせた『火要鎮』は、日本的カルチャーをアニメ上で融合させ、様式化することに成功した野心的な実験作である。
収穫は『武器よさらば』だった。複数のキャメラ・アイによって恐る恐る進入する廃墟の近未来東京。無人戦車と傭兵の戦いを通し、ヴァーチャルに戦争を体感させる技に冴えを見せる。この演出で長編が観てみたい。
ジブリの「震災と零戦」の陰で、静かに同時公開された「大火と戦車」を見逃してはならない。
オムニバスとしてのバランスに欠けるのが惜しい
日本が世界に誇る漫画家でアニメ監督でもある大友克洋の陣頭指揮のもと、彼を含む4人のクリエイターによる短編アニメで構成されたオムニバス映画。テーマはズバリ“日本”だ。モノノケの世界に迷い込んだ男の不思議な体験を描く森田修平の「九十九」、恋する女の情念が江戸の町を炎で包む大友克洋の「火要鎮」、幼い少女に心を動かされたシロクマが寒村を荒らす巨大な赤鬼と対峙する石井克人の「GAMBO」、そして廃墟と化した近未来の東京で無人兵器と戦う一団を描いたカトキハジメの「武器よさらば」。それぞれに独創的な作品が集まったのはいいのだが、その作風やテーマを含めて「武器よさらば」だけが全体から浮いてしまったような印象は否めない。日本古来の伝統美を豊かなイマジネーションと丁寧な筆致で描き出した他の3篇に比べ、SFバトルアクションに属するこの最終章はちょっと異質すぎたように思える。とりあえず、絵巻物に命を吹き込んだかのような「火要鎮」の江戸情緒あふれる様式美は絶品。