オーガストウォーズ (2012):映画短評
オーガストウォーズ (2012)これぞプロパガンダ映画の鑑!
ロシア版「トランスフォーマー」か「パシフィック・リム」かと言わんばかりのポスターが紛らわしいが、これは南オセチア紛争を題材とするれっきとした戦争映画である。
南オセチア紛争とはロシアとグルジアの間で勃発した領土紛争のこと。当初はロシア側の侵略行為というグルジア側の一方的な主張が報じられたが、後に戦争を仕掛けたのがグルジアと発覚。被害者ぶっていた彼らの嘘が次々と露呈した。この紛争を最初に映画化したのはレニー・ハーリン監督の「5デイズ」。ところが、これはグルジア政府が深く関与した偏見だらけのプロパガンダ映画だった。
で、その「5デイズ」に対するロシア側のアンサーである本作。あくまでも主軸は幼い息子を救出しようとする女性の母性愛。さりげなく客観的事実を配しながら、決してプロパガンダ色を押し出さないところが心憎い。しまいにはグルジア側の良心までをも描く。さすがはプロパガンダ映画発祥の国、やることが一枚も二枚も上手だ。本物の軍隊が廃墟となった町をまるごとぶっ壊したというリアルな戦闘シーンもド迫力。「5デイズ」関係者がこれを見たら恥じ入るはずだ。