アナと雪の女王 (2013):映画短評
アナと雪の女王 (2013)ライター3人の平均評価: 4
名作ディズニー映画には必ず名曲の存在がある。吹替版も必聴!
心を閉ざした姉と愛を希求する妹の葛藤をテーマに据え、アンデルセン童話を換骨奪胎。姉が魂を解放させる渾身の歌と氷のビジュアルが素晴らしい。ディズニー復活が謳われた90年前後を思い起こさせるほど、音楽とドラマが一体化している。
ロマンスと躍動感に満ちているが、プロット運びは決して巧くない。善悪バトルの構図を否定したためカタルシスは弱く、ヒロインの貫通行動は見えにくい。しかしキャラを際立たせ、本格的ミュージカルに挑み、コメディリリーフで牽引する力がすこぶる強い。名作の誉れ高いディズニー映画には、必ず耳に残る名曲の存在がある。原語版のみならず日本語吹替版の松たか子&神田沙也加の歌声も必聴だ。
神田沙也加の美声に聞き惚れる
主題歌が米アカデミー賞楽曲賞を受賞したが、イディナ・メンゼルの歌声は予告編で視聴して頂くとして、ここはあえて日本語吹き替え版をオススメ。エルサ役の松たか子の実力は言わずもがな、神田沙也加の甘く透明感ある声がピュアなアナ役にピッタリで心地いいこと。親譲りの美声の持ち主というだけでなく伸びやかな歌声は、地道に舞台に立ち続けて鍛錬を重ねてきた賜物だ。今回改めて声だけを聴き、“七光り“と揶揄していた人は認識を改めるに違いない。
シネコン時代になって米映画の日本語吹き替えをタレントやアイドルが務めてガッカリする例が多かったが、これは初の成功例かも。今後の日本語吹き替え版はプレッシャーかかりますな。
大人の女性も共感できるアンデルセン童話の新解釈
ソ連時代のロシアでも見事にアニメ化されたアンデルセン童話「雪の女王」。ディズニー流新解釈は不安要素だったが、結局は全くの杞憂に過ぎなかった。
一心同体でありながら対照的な姉妹をヒロインに据えることで、女性の内的な多面性を表現しつつ、たとえ道のりは険しくても自分らしく生きることの大切さを力強く謳いあげる。恐らく、少女よりも大人の女性の方が共感できる点は多いだろう。
吹替えにブロードウェイ俳優(英語版)を動員した本格的なミュージカル演出、そしてCGで描かれる雪と氷の世界の溜息が出るほどの繊細な美しさもさる事ながら、魔法を解く“真実の愛”の本当の意味に思わず膝を打つ。ディズニー侮るべからず。