アブダクティ (2013):映画短評
アブダクティ (2013)温水洋一が大熱演!物語の飛躍のベクトルが意外性満点のスリラー
目覚めるとコンテナの中に捕われていたダメ男・千葉が、どこかへ運ばれていく。コンテナ内にあるのは謎の石だけという状況下でのワンシチュエーション・スリラー。これは映画『CUBE』(97)なのか『リミット』(10)なのか? 流行のリアル脱出ゲーム系なのかオチはあるのかと想像するも、全てはいい意味で裏切られる内容に嬉しい驚きの連続だった。
この面白さをあえて例えてみるなら、筆者は千葉の過去がわかった時点でコミック『20世紀少年』のある場面を思い出し、隣り合うコンテナを通じて何百人も運ばれていることが判明し、彼らの共通項が見つかった時点で謎だらけのTVドラマ『LOST』と類似点を見出すも、もしやこれはTVドラマ『HEROES/ヒーローズ』…!?と印象は二転三転。で、千葉の運命はどうなるの?というスリルは最後まで持続する。
終盤の飛躍は好き嫌いが分かれるだろうが、やはり『地獄甲子園』の山口雄大監督は面白いことをやってくれる。また脚本の牧野圭祐に加えて、5日間で撮り終えたという全編ほぼ独演の温水洋一が素晴らしい! 温水の迫真の演技なくして本作の成功は有り得なかっただろう。