ADVERTISEMENT
18歳以上がご覧になれます

アデル、ブルーは熱い色 (2013):映画短評

アデル、ブルーは熱い色 (2013)

2014年4月5日公開 179分

アデル、ブルーは熱い色
(C) 2013 - WILD BUNCH - QUAT'S SOUS FILMS - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES - RTBF(Television belge)- VERTIGO FILMS

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

清水 節

指先は画面をこするためじゃなく、愛を確かめるためにある。

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 レズビアン映画ではない。これは恋愛映画だ。アイデンティティの定まらぬ少女にとって、自らを受け容れてくれる突然の他者が、女性だった。思いも寄らぬ出会い。隔たりのある立場。何も珍しい物語ではない。劇映画もまたドキュメンタリーよろしく、その瞬間にしか撮り得ないものを写し取ってしまう。監督の執拗なる強要の下、ふたりの女優は身体で表現する域に達していった。視線は絡まり、肢体が混ざり、存在をまさぐり合う。
 
 磁力は長く続かない。永遠不滅なき儚さ。ふたつの肉体に人生が凝縮され、奇跡的な不意の煌めきを目撃した至福感に満たされる。指先は画面をこするためにあるんじゃない。他者に触れ、愛を確かめるためにある。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

それでも高い、同性というハードル

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 同性の概念を取り払ってくれる恋愛劇だ。それはひとえに、濡れ場にも果敢に挑んだ女優2人の熱演に他ならない。ちょっと背伸びしたい思春期の女子にとって中坊レベルの男子より、画家志望で感性豊かな同性の方が遥かに刺激的でもある。そんな2人の奥深い会話すらあまりにも美しく、羨望と嫉妬を抱いてしまう。だが同時に本作は、同性婚が合法化されたフランスでも偏見を取り除く事の困難さも印象付ける。
 安定した職業を望む両親、アデルが就職した教育現場、そしてアデルの中にもある。それは性のみならず、国籍や生い立ちに置き換えても言えるかもしれない。だからこそ本作は、人と人が出会う奇跡と意義を改めて考えさせてくれるのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

★★★★

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

 パルムドールを受賞すると作品情報がちらほらと耳に入り、ハードなSEXシーン付きで描かれるレズビアン女性の恋愛ドラマだと思っていた。が、実は少女アデルの人生の断片を瑞々しく切り取った成長ドラマであった。アデルは“運命の女性”と出会って愛を知り、嫉妬や裏切りを体験する。エクスタシーに酔い、人生を考え、失った愛を取り戻そうともがき……。どんな時も彼女の心に渦巻く感情に揺さぶられ、シンクロしたくなる。ひとえにアデル・エクザルコプロスの演技力がもたらす効果で、彼女の表情や仕草から伝わってくる言葉にならない思いの強烈さにたじろぐことも。恋すると心が痛い、ということを久々に思い出してしまったよ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

女子だけじゃない。いまと昔の若者すべてに捧ぐ。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

岡崎京子の『危険な二人』『東京ガールズブラボー』、魚喃キリコの『blue』……。原作はフランスのコミックだが、日本の90年代ガールズコミックの懐かしい傑作群と並べたくなる作風だ。背伸びしたい盛りの女子高生と、カリスマ的な美大生。文化的アイテムとしてはサブカルや左翼思想の背景がある。そんな物語を生々しいドキュメンタリー・タッチで撮った逸品。

女子ふたりのレズビアニズムも絡む内容だが、男の観客でもバリバリ共感可能なのは、多感な思春期における人生を変える出会いと、大人への階段を昇る時の喪失感という普遍・王道のテーマを描いているから。A・ケシシュ監督の粘っこい演出&性描写は濃厚で容赦なし!

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

やたら下品な食べっぷり、だらしない口元が素晴らしい。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

俳優はどこまで追いこまれればこんな芝居ができるのか。レア・セドゥが監督を糞味噌に言ってたのもむべなるかな。いってみりゃフランス版の相米慎二である。3時間、あまりにもリアルな感情のぶつかりあいにザワザワさせ続けられるが、ハードコアで執拗な性描写もまったく浮き上がって見えないほど、その「感情」が徹底して「肉体」でこそ語られるのがケシシュの凄みだ(惜しむらくは、例えば『クスクス粒の秘密』のようにマルチキャメラ撮りでないほうがより緊迫感が増したとも思うけれど)。対照的な二人の「愛」の底流に横たわる階級差の問題が、「食」のシーンで端的に示されるのも見逃すべきではないだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

話題の動画

最新の映画短評