イン・ザ・ヒーロー (2014):映画短評
イン・ザ・ヒーロー (2014)ライター3人の平均評価: 3
ツッコミどころ満載ながら、王道な仕上がり
ネタがネタだけに地雷臭が漂うが、何より自伝的要素も込められた唐沢寿明の気合いがスクリーンから伝わってくる。また、李鳳宇プロデュースにより、初の大作を任せられた武正晴監督の職人技も見られ、じつに王道な仕上がりである。ただ、当初のコンセプトと違うクライマックスやキャラの関係性など、ツッコミどころ満載だし、興醒めしてしまったエンドロールのように“泣かせ要素”と“笑い要素”のバランスが異常に悪い。つか、万人受けを狙って、オタク要素を薄めたのは構わないが、彼らの人気を支えるファンの存在に触れないのはアカンでしょ。そういう意味では、同じスーツアクターを扱った台湾映画『變身(未)』の足元にも及ばない。
こんな設定、つくらなきゃよかったのに。
李鳳宇プロデュース作らしい奇を衒わぬ王道の展開で描く、唐沢自身の経験も参考にしたとおぼしきスーツアクターの世界。裏方俳優=『蒲田行進曲』な発想含め、これといった意外性はないが、とにかく映画愛にまつわる話だから好感を抱かぬわけではない。しかしそれを落胆へと転じるのがクライマックスの大立ち回りというのが痛い。そもそも国籍不明の大監督(『王の男』のイ・ジュニク監督怪演!)が「CG、ワイアなしのワンカット撮影」にこだわったからこそ、という設定。なのに、ここで見られるのはCGもワイアもあり、カットも割りまくり、ってのはどういうコト? アクション自体は悪くないが、大前提を裏切ってるから根こそぎ台無しだ。
いい作品を作りたい、裏方の熱意に胸が熱くなる
体を張って映画作りに貢献する大部屋役者の熱意に笑って泣いた『蒲田行進曲』の21世紀版といった雰囲気で、やはり胸が熱くなるシーンが多数。スターが小道具を投げたことに「徹夜して作ったんだよ」と怒るスタッフや画面に顔が映り込んでスタントをやり直すスーツアクターなどなど。映画やドラマはスターひとりで作るわけじゃなく、関わった人たち全員の努力の結集なんだよね。最近の若者は、夢を叶えるために努力する姿勢をかっこ悪いと思うようだが、唐沢寿明演じる主人公の前向きで熱い生き方を見倣ってほしいもの。スーツアクター出身とはいえ50歳を超えてハードな長回しスタントを演じ切った唐沢さんの役者魂、万歳!