ミスターGO! (2013):映画短評
ミスターGO! (2013)ライター3人の平均評価: 3.3
子供だましとナメてたら意外に感動!
なんという馬鹿げた発想だ、と腰が引けるのは最初のうちだけ。『ミラクル7号』の少年役から見事に可愛く成長したシュー・チャオの凛々しさ(すぐに映画から消えるおじいちゃん役はポン・ジュノ映画常連ピョン・ヒボン!)と、終始出ずっぱりのCGゴリラの出来の良さ(ここまで出来りゃあ『マイティ・ジョー』レベルだ)に本気の作りを感じる。子供騙しな虚構にも関わらず、球団経営陣の打算や駆け引きはやたらシビアだし(デフォルメの度は強いとはいえ中日オーナー役のオダジョーも)、借金取りとやさぐれゴリラとのシンパシーにもグッとくるし、何より大スタジアムを縦横無尽に俯瞰するダイナミックなキャメラワークが野球映画のお手本的だ。
水島新司の世界観を韓中合作で映像化!?
原作は韓国の人気コミックなっているが、水島新司原作の短編「たそがれちゃってゴリ」の映画化といってもいいぐらいブッ飛んだ設定。これは四半世紀前に公開された「巨人の星」×「アパッチ野球軍」な『外人球団』にも似ており、今回も日本の荒唐無稽な野球マンガを下敷きにエンタテイメント大作を作り出してしまった、韓国映画界の底力には脱帽だ。
しかも、勢い止まらぬ中国映画界との合作ということで、チャウ・シンチーに発掘されたシュー・チャオを登板。シンチーの『少林サッカー』にも近い“正しいCGの使い方”を魅せつけてくれるなど、サービス精神も満載。ただ、ファミリー映画として観ると2時間超えは、ちょいとボリューミー。
バカバカしいが痛快、悪ノリも味と化す快(怪?)作
バッティングの得意なサーカスのゴリラが韓国プロ野球界のスターとなる! 奇想天外と呼ぶ他ない、そんな設定だけで吸引力は抜群で見入ってしまった。
代打で登場してはホームランをかっとばすゴリラの活躍ぶりは痛快だし、調教師の少女との絆のドラマもウェットに走りすぎず、魅力的。韓国映画特有の過剰なエモーションは控えめで、ひょうひょうとしている語り口は香港映画に近い。
巨人と中日がジャパンマネーにモノを言わせてゴリラをスカウトしにくるという展開は日本の観客のお楽しみ。中日のオーナーにふんしたオダギリジョーの悪ノリ演技も見どころで、バカバカしさを娯楽と受け止められる方にぜひともオススメしたい。