神宮希林 わたしの神様 (2014):映画短評
神宮希林 わたしの神様 (2014)ライター2人の平均評価: 4
樹木希林解剖図鑑
言葉は悪いが、伊勢神宮参拝をダシに樹木希林を撮る…だ。なにせ『死刑弁護人』など挑戦的なドキュメンタリーを製作してきた東海テレビである。普通の旅企画になるワケがない。かくしゃくとし歯に衣着せぬ発言が魅力の希林さんの人生を振り返るだけではなく、自宅にまでカメラは侵入。都会の喧騒を遮断するかのような厳かで整然とした空間は、伊勢神宮にも劣らない厳かな雰囲気。何より雄弁に、時流に流されず筋の通った生き様を魅せる希林さんの内面を表している。
そんな彼女ゆえ、式年遷宮で沸く伊勢神宮を客観視しつつ、ではなぜ人は集うのか?を紐解いていく。希林さんの心の旅路をゆるりと深く共有する、贅沢なひとときである。
日本人であることを強く実感する作品
樹木希林が伊勢神宮の式年遷宮を機に縁のある土地や人物を訪ねる映像から八百万の神との関係などに思いをはせ、日本人であることを強く実感した。樹木が訪ねるのは神宮に奉納するアワビを採る70代の海女やお宮新築用のヒノキを育てる木こりなど。誰もが目に見えない神に感謝の気持ちを抱きながら生きていて、普通の生活を営むことが伝統を守ることにつながる生き方には深い感銘を覚える。歴史とは綿々と続く生活にほかならないのだ。樹木の語りはナチュラルで温かく、見ていて頬が緩む。カメラの前で明かされる彼女の「あらゆるものをしっかり使い切り、欲張らず、何事にも感謝する」という凛とした生き方にはただあこがれるのみ。