ジプシー・フラメンコ (2012):映画短評
ジプシー・フラメンコ (2012)血沸き肉躍る、とはこのことだ。
狂熱的なリズムの坩堝へ頭から突っ込むつもりで臨むべし。 “お芸術フラメンコ映画”とはまったく異なる興奮が待っている。キイとなるのは50年前に亡くなった象徴的存在、カルメン。その血を引く若きダンサーが大舞台に立つ姿と、カルメンが歌い踊る映画を観て目をキラッキラ輝かす小太り5歳児(このパートだけでも傑作子供映画)を並行して描く84分は短すぎる感も。だがこの監督、「そのとき何を撮るべきか」がはっきり判っている。視点を定め、場面の本質を衝く映像をためらいなく押さえているから時間は濃密だ。ことさら民族問題に言及はしないが (ロマという曖昧な呼称を用いないのは慧眼)、その「魂」はずどんと感じられるはずだ。
この短評にはネタバレを含んでいます