トム・アット・ザ・ファーム (2013):映画短評
トム・アット・ザ・ファーム (2013)嘘と暴力に満ちた現代社会への痛烈な皮肉
亡くなった恋人の実家である農場を訪れたゲイの青年が、息の詰まるような恐怖と狂気の世界に囚われてしまう。言うなれば、閉鎖的な田舎社会の暗部を描いたサイコ・スリラーだ。
美しく端整でありながら、どこか陰惨な禍々しさを漂わせた映像はクローネンバーグを彷彿とさせ、一度足を踏み入れたら抜け出せない不条理な異空間へと観客を誘う。そして、暴力的かつ独裁的で、しかし同時に複雑な孤独を抱えた恋人の兄の存在がスクリーンを不穏な空気で満たす。
ホモフォビアを題材にしつつも、それが本作の核心ではない。これは異なる価値観の存在を認めず、嘘と暴力で他人を傷つけ身内を支配する歪んだ現代社会や国家権力への痛烈な皮肉だ。
この短評にはネタバレを含んでいます